オートファジーは微生物感染に対する宿主の防御機構である。HIV-1感染時、宿主細胞のオートファジー活性が変動することから、HIV-1複製とオートファジーとは相互に干渉し合っていることが予想されている。26年度までの成果として、HIV-1タンパク質であるVprがオートファジーシステムを誘導する分子スイッチとして機能することを明らかにした。Vprのオートファジー制御能は本研究により初めて明らかにされた。さらに、オートファジー制御に利用する宿主分子装置はこれまで報告されている分子装置とは異なることも明らかにした。いくつかの方法によりVprが担うオートファジー制御に必要とされる宿主側の分子を単離・同定した。平成27年度にかけて同定した分子のオートファジー制御への関与を解析したところ、アポトーシスに関与することが報告されている分子の一つが特異的にVprの標的になっていることが分かった。さらに解析を続け、Vprはこの分子と相互作用することでオートファジーに正に働く別の分子を細胞質内で活性化していることが分かった。この分子の他に微小管またはミトコンドリアへ局在する分子などが結合因子として同定されたが、制御に明確な関与を認めなかった。また、Vprはオートファジーの最終過程を阻害する活性を併せ持つ。27年度において本活性の詳細な解析を行った結果、STX17のオートファゴソーム膜への動員、STX17とSNAP29およびVAMP8との相互作用、およびオートリソソーム膜形成はVprの阻害を受けない一方、オートリソソームの酸性度がVpr依存的に破綻していることが分かった。
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