研究概要 |
2009年に新型インフルエンザがパンデミックを引き起こし、高病原性の鳥インフルエンザウイルスによる死者が報告されるなど、インフルエンザウイルスは人類にとって脅威である。インフルエンザウイルスはマイナス鎖のRNAゲノムを有し、これを複製し転写する酵素としてRNA依存RNAポリメラーゼを有しており、ウイルスの増殖に対して根本的な役割を担っている。RNAポリメラーゼはPA、 PB1、 PB2の3つのサブユニットからなる複合体である。C60フラーレンはサッカーボール状の分子であり、こうような形状の分子が抗インフルエンザ活性を有していると言う発想はこれまで全くなされていなかった。本申請者の研究室では、複数のC60フラーレン誘導体が抗インフルエンザウイルス活性があることを示し、Plos ONE誌に論文を2013年に発表した(Shoji M, ..., Kuzuhara T. PLoS ONE, 2013)。複数のC60フラーレン誘導体がインフルエンザウイルスRNAポリメラーゼのPAサブユニットのエンドヌクレアーゼ活性を試験管内で阻害し、インフルエンザウイルスの増殖を細胞系において阻害した。また既存の抗インフルエンザ薬であるオセルタミビルがその副作用としてマウスの行動を促進するメカニズムを解明し、British Journal of Pharmacology誌に発表した(Hiasa M, ..., Kuzuhara T. British Journal of Pharmacology, 2013)。オセルタミビルはプロドラッグ選択的にモノアミン酸化酵素を試験管内で阻害し、脳内投与によりプロドラッグ選択的にマウスの幾つかの行動を促進した。オセルタミビルの副作用メカニズムを解明し、さらに良い抗インフルエンザ薬を開発する礎を築いた。以上、新規抗インフルエンザ化合物の発見と既存の抗インフルエンザ薬の副作用メカニズムという総合的な解析ができた。
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