本研究ではデングウイルスの中でも複製に必須でありながら詳細な機能が明らかとなっていない非構造蛋白質NS4Aおよに焦点を当て、これらに結合する化合物をどうていすることによりウイルス複製機構の解明および抗デング薬創薬を目指してきた。 昨年度までにNS1に結合する化合物の類似構造体の一つサイクロフェニル(CF)が抗デング活性を有する可能性が示唆されていた。本年度はCFを使用してさらに詳細な検討を行った。デングウイルスには4種類の血清型が存在するが、抑制の程度に差はあるもののCFはすべての血清型に対し増殖抑制活性を示した。この増殖抑制活性は、アフリカミドリザル由来Vero細胞およびヒト肝がん由来Huh-7細胞で確認できたが、蚊由来C6/36細胞では抑制がみられなかった。CFはすでに排卵誘発剤として使用されている薬剤であり、エストロゲンレセプターリガンドである。そこで同じエストロゲンレセプターリガンドであるタモキシフェンとクロミフェンについても抗デングウイルス活性があるか調べたところ、ほぼ同程度の増殖抑制活性が確認された。次にウイルスのライフサイクルにおけるCFの作用点の推定したところ、ウイルスの侵入やゲノム合成よりも後の過程に作用することが示唆された。さらにCFに耐性を示すデングウイルスの分離を試み、部分的に耐性を獲得したウイルスを得ることができた。部分耐性株の塩基配列を調べたところ、5か所のアミノ酸変異が見つかった。
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