研究課題/領域番号 |
25460580
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
石井 孝司 国立感染症研究所, 国立感染症研究所, 室長 (40280763)
|
研究分担者 |
李 天成 国立感染症研究所, その他部局等, 研究員 (90370957)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | E型肝炎ウイルス / 複製機構 / 感染メカニズム / 病原性 |
研究概要 |
近年、HEVを培養細胞系で増殖させる系が確立されたが、ウイルスの増殖は非常に遅く、ウイルスの病原性やトロピズムを解明する上で、効率のよいHEVの増殖系を確立することが望まれている。本年度は、感染性のHEV cDNAクローンからのレプリコンの構築を試みた。また構築されたレプリコンをHEV VLPに包埋させた、一過性の感染性粒子を取得することができるかどうかについて検討を行った。 感染性のHEVクローン83-2の構造蛋白領域をレポーター遺伝子で置換したcDNAを作成し、本クローンの上流に挿入したT7 promoterを用いてRNAを作成した。本RNAをヒト肝癌由来細胞PLC/PRF/5細胞にエレクトロポレーションにより導入し、レポーター遺伝子が機能するかどうか調べた。また、本細胞で構造蛋白を発現させ、さらにレプリコンRNAを導入することで、構造蛋白中にレプリコンRNAが包埋された形で粒子構造が形成されるかどうかを調べた。 感染性クローン83-2の構造蛋白であるORF2領域をレポーター遺伝子と置き換えることによりHEVレプリコンを構築した。構造蛋白(ORF2)を発現する細胞に、IRES-GFPNeoを持つレプリコンを導入した細胞を作成した。その中には構造蛋白の分泌が比較的良好なクローンがあった。これらのクローンの培養上清を濃縮しショ糖遠心密度勾配で分析したところ、構造蛋白は一定の密度に収束し、粒子構造をとっている可能性が示唆された。上記のフラクションをRNase A処理後にRNAを抽出し、構造、非構造それぞれの領域のRT-PCRを行ったところ、本フラクションのRNAはRNase A抵抗性であり、構造領域のみがPCRで増幅されたことから、レプリコンが包埋された粒子である可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HEVのレプリコンの構築に成功した。また、PLC/PRF/5細胞に構造遺伝子発現プラスミドとレプリコンRNAを導入し、培養上清を濃縮しショ糖遠心密度勾配で分析したところ、構造蛋白は一定の密度に収束し、粒子構造をとっている可能性が示唆された。上記のフラクションをRNase A処理後にRNAを抽出し、構造、非構造それぞれの領域のRT-PCRを行ったところ、本フラクションのRNAはRNase A抵抗性であり、構造領域のみがPCRで増幅されたことから、repliconが包埋された粒子 (trans-packaging particles) である可能性が示唆された。また、レプリコン導入細胞を用いたレプリコン複製阻害化合物のスクリーニングの系を確立し、低分子薬剤のライブラリーからの阻害化合物のスクリーニングを開始している。LOPAC化合物ライブラリーから、HEVレプリコン複製阻害活性を持つ化合物をピックアップしたところ、すでにHEV増殖阻害活性が報告されていたリバビリンが含まれており、本スクリーニング系の妥当性が示されたのではないかと思われる。阻害活性を持つ低分子化合物の阻害メカニズムの解析は、HEVの病原性発現メカニズムの解析に役立つと思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、上記のレプリコンが包埋された可能性のある画分について、電子顕微鏡での観察と感染性の有無の確認を行う予定である。感染性が確認できれば、本粒子はトランスパッケージ型の1回のみ感染性の粒子として、HEVの感染過程の解析に有用であると考えられる。また、HEVの中空粒子はカルシウム濃度を調節することにより、中空粒子の分解と再構成を行うことができる。この原理を利用し、外部からHEVレプリコンRNAを添加してVLP中に包埋させる手法も検討する。 HEVはgenotypeにより感染性が異なり、genotype 1、2はヒトのみに感染するが3、4はヒト以外にもブタ、イノシシなどにも感染する。この感染性の差が生じるメカニズムについても、複製をレプリコンで調べ、細胞への吸着、侵入をVLPを使って検討することで、感染性の差がどの段階で生じているのかを明らかにしたい。 また、HEVレプリコン複製阻害化合物のウイルス複製抑制効果を調べ、急性E型肝炎治療薬としての可能性を検討する。また、これらの複製抑制および促進活性を有する化合物を利用し、HEVの感染、増殖機構や病原性発現メカニズムの解析も行う予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
論文の英文校正のための研究費だが、年度内に論文が完成しなかったため。 新年度に英文校正費として使用する。
|