• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2013 年度 実施状況報告書

A型インフルエンザウイルスの宿主特異性の分子機構に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 25460581
研究種目

基盤研究(C)

研究機関岩手大学

研究代表者

今井 正樹  岩手大学, 農学部, 准教授 (30333363)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード鳥インフルエンザウイルス / 季節性インフルエンザウイルス / ヘマグルチニン(HA)蛋白質 / 構造安定性 / レセプター特異性 / 膜融合活性
研究概要

同じHA亜型のヒト季節性インフルエンザウイルスと鳥インフルエンザウイルスとの間で、ヘマグルチニン(HA)蛋白質の構造安定性に違いがあるのかどうかを解析した。
イヌ腎臓由来のMDCK細胞を用いて、ヒトから分離されたH1とH3亜型の季節性ウイルス流行株[A/Brisbane/59/2007(H1N1), A/California/04/2009(H1N1pdm), A/Uruguay/716/2007(H3N2) ]を培養した後、ショ糖クッション遠心法により精製した。カモやハクチョウから分離されたH1とH3亜型のウイルス[A/duck/Alberta/35/76(H1N1), A/swan/Hokkaido/55/96(H1N1), A/duck/Hokkaido/5/77(H3N2)、A/duck/Ukraine/1/63(H3N8)]は、発育鶏卵で培養した後、同様の方法を用いて精製した。構造が変化(変性)したHA蛋白質は、レセプター結合活性や膜融合活性を失う。そこで、熱処理した精製ウイルス粒子の赤血球凝集(HA)活性を測定することにより、HA蛋白質の構造安定性を評価した。精製ウイルス粒子を50℃で所定の時間処理した後、ウイルスのHA活性を測定した。その結果、何れの株も1時間の熱処理でHA活性が1/2から1/4程度まで低下した。しかし、その後4時間までHA活性は殆ど変化が認められなかった。このことは、鳥インフルエンザの自然宿主である野生水禽が保持するウイルスとヒトの間で流行しているウイルスは、温度などの物理的環境変化に対して同等の安定性を持っていることを示唆している。
今後は、ヒト型レセプターを認識するのに必要なアミノ酸変異を鳥インフルエンザウイルスのHA蛋白質に導入した時、その変異が蛋白質の構造安定性に影響するのかどうかを解析する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

平成25年度は、同じHA亜型のヒト季節性インフルエンザウイルスと鳥インフルエンザウイルスの間で、HA蛋白質の構造安定性に違いがあるのかどうかを調べるために、精製ウイルス粒子及び蛋白質発現細胞を用いて、HA蛋白質の熱に対する安定性を評価する予定であった。ウイルス粒子を用いた解析については完了し、同じHA亜型のヒト季節性インフルエンザウイルスと鳥インフルエンザウイルスの間で、HA蛋白質の熱安定性に有意な違いはないことが示唆された。
しかしながら、平成25年10月に異動した岩手大学において、実験室等を新規に整備する必要があり、また、実験に不可欠な備品を新規に購入する必要があったことから、当初の計画通り実験を進めることができなかった。そのため、平成25年度に予定していたHA蛋白質発現細胞を用いて熱安定性を解析する手法の確立には至らなかった。しかし、H1、H2およびH3亜型の各鳥インフルエンザウイルス[A/duck/Alberta/35/76(H1N1), A/swan/Hokkaido/55/96(H1N1), A/duck/Hong Kong/273/78(H2N2), A/duck/Germany/1215/73(H2N3), A/duck/Hokkaido/5/77(H3N2)、A/duck/Ukraine/1/63(H3N8)]から由来する野生型HA遺伝子を組み込んだ蛋白質発現プラスミドの作出については完了しており、現在、解析手法の確立を目指している。

今後の研究の推進方策

平成26年度は、ヒト型レセプターを認識するのに必要なアミノ酸変異が鳥インフルエンザウイルスHA蛋白質の構造安定性と膜融合活性に影響するのかどうかを解析する。
ヒト型レセプターを認識する鳥ウイルスは哺乳類に感染する可能性があることから、感染性のある精製ウイルス粒子を用いてHA蛋白質の性状を解析するには、バイオセーフティレベル3実験室などの封じ込め実験室が必要である。しかし、研究代表者が所属する岩手大学はその実験設備を持たないことから、ウイルス粒子を用いて性状解析を行うことができない。そこで、発現細胞を用いてHA蛋白質の性状を解析する。
平成25年度内に実施する予定であったHA蛋白質発現細胞を用いて熱安定性を解析する手法を早急に確立する。次に、ヒト型レセプターを認識するのに必要なアミノ酸変異を導入したH1、H2およびH3亜型の各鳥インフルエンザウイルス由来のHA蛋白質を発現する細胞を作製する。これら発現細胞を用いて、変異HA蛋白質の熱に対する安定性ならびに膜融合活性を解析し、野生型HA蛋白質ならびに季節性ウイルス由来HA蛋白質の性状と比較する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2013

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Transmission of influenza A/H5N1 viruses in mammals.2013

    • 著者名/発表者名
      Imai M, Herfst S, Sorrell EM, Schrauwen EJ, Linster M, De Graaf M, Fouchier RA, Kawaoka Y
    • 雑誌名

      Virus Research

      巻: 178 ページ: 15 ~ 20

    • DOI

      10.1016/j.virusres.2013.07.017.

  • [雑誌論文] Selection on haemagglutinin imposes a bottleneck during mammalian transmission of reassortant H5N1 influenza viruses.2013

    • 著者名/発表者名
      Wilker PR, Dinis JM, Starrett G, Imai M, Hatta M, Nelson CW, O'Connor DH, Hughes AL, Neumann G, Kawaoka Y, Friedrich TC
    • 雑誌名

      Nature communications

      巻: 4 ページ: 2636

    • DOI

      10.1038/ncomms3636.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Characterization of H7N9 influenza A viruses isolated from humans.2013

    • 著者名/発表者名
      Watanabe T, Kiso M, Fukuyama S, Nakajima N, Imai M, Yamada S, Murakami S, Yamayoshi S, Iwatsuki-Horimoto K, Sakoda Y, Takashita E, McBride R, Noda T, Hatta M, Imai H, Zhao D, Kishida N, Shirakura M, de Vries RP, Shichinohe S, et al.
    • 雑誌名

      Nature

      巻: 501 ページ: 551 ~ 555

    • DOI

      10.1038/nature12392.

    • 査読あり
  • [学会発表] 空気伝播するH5インフルエンザウイルス2013

    • 著者名/発表者名
      今井正樹
    • 学会等名
      第127回 宮崎大学農学部獣医学科集談会
    • 発表場所
      宮崎大学農学部(宮崎県宮崎市)
    • 年月日
      20130915-20130915
    • 招待講演
  • [学会発表] 中国で発生した鳥インフルエンザA(H7N9)について2013

    • 著者名/発表者名
      今井正樹
    • 学会等名
      第47回日本ウイルス学会北海道支部会夏季シンポジウム
    • 発表場所
      ホテル北乃湯(北海道奈井江町)
    • 年月日
      20130720-20130721
    • 招待講演

URL: 

公開日: 2015-05-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi