研究課題
エンテロウイルス71(EV71)が神経細胞に軸索末端から侵入し逆行性輸送され細胞体に至る過程のどこかで脱殻するが、通常の培養細胞においてですら脱殻機構が解明されていないのが現状である。最初から運動神経細胞を用いて脱殻機構を解析することは難しいため、通常培養細胞における脱殻機構の解明を試みた。光感受性EV71の作製条件を最適化し、作製した光感受性EV71を用いて、感染後いつ脱殻が行われるかを検討した。その結果、感染10分後には脱殻しておらず、感染20分後には脱殻が進行しており、感染40分後には脱殻完了していた。In situ 免疫細胞染色の結果から、感染10分後には脱殻しておらず、感染20分後からわずかに脱殻が始まり、感染30分後にはかなり脱殻が進行していた。脱殻の時期にどの細胞内小器官に局在しているかを免疫染色で検討したところ、感染20~30分後にはlate endosomeマーカーであるmannnose-6-phosphate receptor(M6PR)およびRab9、lysosome-associated membrane glycoprotein 2(LAMP2)と共局在し、感染40分後にはRab9、LAMP2と共局在していた。以上の結果から、脱殻の時期にはlate endosomeか、late endosomeからオートファゴソーム系に入ったamphisomeに存在することが判明した。透過電子顕微鏡観察でも、感染20分後にはlate endosome中に、感染30分後にはautophagosome隔離膜内部にEV71様粒子が確認できた。EV71感染初期に関与すると考えられるオートファジー経路の阻害剤3-メチルアデニン(3-MA)存在下、EV71の細胞内局在を検討したところ、感染40分後でもLAMP2とは共局在せず、EV71はlate endosomeに留まることがわかった。現在、オートファジー経路に入ることが脱殻に必要か検討中である。
2: おおむね順調に進展している
神経細胞でのEV71感染初期過程の基礎となる、通常培養細胞での感染初期過程を解明しつつあるため。
まずは通常培養細胞での感染初期過程を解明し、神経細胞での感染初期過程解析につなげる。これまで神経病原性が安定したEV71株が得られていなかったが、研究室内で、安定して高神経病原性を示す株が得られるようになったことから、この株を用いることが可能であれば動物実験に使用させていただき、今後検討を進めていく。
少額しか予算が残らず、無理して使い切ることはせずに、次年度に使用することにしたため。
抗体購入にあてる。
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Molecular and Cellular Biology
巻: 34 ページ: 1576-1593
10.1128/MCB.00093-14.
http://www.igakuken.or.jp/neurovirology/