本研究においては、Unc93 homolog B1 (Unc93B1)によるToll-like receptor 7 (TLR7)とTLR9の応答制御メカニズムの解明と、応答制御メカニズム破綻時に見られる致死的な自然炎症に関わる調節因子の探索を目指した。 前者に関しては、shRNAライブラリとレポーターアッセイを用いたファンクショナルクローニングによって、TLR7の応答性を抑制する分子の探索を行った。TLR7の応答性を抑制するshRNAの配列が複数得られたものの、これらはオフターゲット効果によるものであった。そこで、使用するライブラリをsgRNAライブラリに変更し、CRISPR/Cas9によるノックアウトに切り替えた。この実験系は非常に効率が良く、TLR7の応答に必要な分子を先行してノックアウトしたところ、既知の分子がすべて同定された。また、ノックアウトすることによってTLR7の応答性を亢進させる分子も同定されてきており、今後の発展が期待される。 後者に関しては、全身性の炎症を自然発症するUnc93B1にD34A変異を持つマウス(D34Aマウス)について、C57BL/6系統とBALB/c系統との間で表現系が異なることを利用し、連鎖解析を行った。その結果、BALB/c系統についてはD34Aマウスの応答性を抑制する遺伝子座が示唆された。ただし、関連遺伝子座の領域が広いことから遺伝子を絞り込むことは困難であった。 そこで、網羅的な連鎖解析と並行する形で、現在までに関与が示唆されたインターフェロンやサイトカインを欠損させたD34Aマウスの作製を行い、表現系に与える影響を検討した。結果として、I型インターフェロンのシグナルがB細胞や特定の樹状細胞サブセットにおけるTLR7の発現を維持し、D34Aマウスの表現系に関与していることが明らかとなった。これまでにI型インターフェロンがB細胞のTLR7発現に関与していることは知られていたが、樹状細胞に関しては未知であり、新しい知見がもたらされたと考えられる。
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