研究課題
申請者はこれまで、樹状細胞(DC)特異的II型TGF-β受容体欠損(TβRII-DCKO)マウスでは、全身性に単球を主体とする炎症性細胞の浸潤、自己抗体の生産、早期死亡など、自己免疫疾患様の病態を示すことを見出してきた。本年度はまず、自己抗体生産に必須なサイトカインであるBAFFおよびAPRIL発現レベルについて調べた。その結果、対照(TβRII-flox/flox)マウスと比較して、TβRII-DCKOマウスでは全身性にBAFF/APRILの発現レベルが著しく亢進していた。なかでも、胸腺や胃粘膜ではAPRIL発現細胞が高頻度に存在しており、これらはTβRII-DCKOマウスにおける自己抗体生産機序に重要な役割を演じているものと考えられた。近年、腸内常在菌が自己免疫疾患の発症や病態形成に重要な役割を担うことが報告されている。そこで、自己免疫疾患様の病態を発症したTβRII-DCKOマウスのリンパ組織における腸内常在菌の有無を検討した。その結果、TβRII-DCKOマウスの脾臓、腸間膜リンパ節、および腸管粘膜固有層では腸球菌Enterococcus spp.が高頻度で検出され、興味深いことに、その多くがDCによって取り込まれていることが確認された。TβRII-DCKOマウスにおける自発的な自己免疫疾患様の病態形成およびそれに伴う早期死亡が、体内移行した腸内常在菌によるものであるか確認する目的で、離乳後から抗生物質の飲水投与をおこなった。その結果、TβRII-DCKOマウスへの抗生物質の継続投与により、リンパ節における腸球菌数の減少に伴い、発症時期の遅延や生存率の改善が認められたことから、同マウスにおける自己免疫疾患様の病態形成は、全身性に移行した腸内常在菌の刺激依存性に惹起されることが判明した。これらの結果から、腸管粘膜におけるDCへの恒常的なTGF-βシグナルは腸内常在菌に対する免疫応答や上皮細胞の透過性を制御するなど、常在菌の体内移行を抑制する上で重要な役割があるものと考えられた。
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Biology of Blood and Marrow Transplantation
巻: 22 ページ: 627-636
10.1016/j.bbmt.2015.12.018.
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