研究課題
免疫細胞の炎症局所浸潤は病原体を排除するのに必須の生体防御反応であるが、同時に自己免疫・アレルギーなどの病態の原因でもある。炎症局所には、炎症を誘発するサブセットだけではなく、免疫抑制機能に特化したサブセットも浸潤することから、各サブセットの浸潤を制御する方法を提供できれば、細胞機能を標的にした従来の薬剤とは異なる方法で自己免疫・アレルギーなど多くの難治性炎症性疾患の治療が可能になる。本研究では、特定の免疫細胞サブセットの炎症局所浸潤の分子機構について、2つのマウス炎症モデルを用いて解析した。平成25年度および26年度は、接触過敏症モデルにおいて、エフェクター/メモリーCD4およびCD8 T細胞では、それぞれナイーブCD4およびCD8 T細胞に比較して、セレクチンリガンド活性の上昇とともに、セレクリンリガンドを修飾する特定の糖転移酵素および硫酸転移酵素の発現が上昇することを示した。一方、制御性CD4 T細胞では、これらの転移酵素の非感作時発現および感作による発現変化がエフェクター/メモリー細胞と異なることを示し、炎症局所への浸潤を司るセレクチンリガンドの活性制御機構がサブセットにより異なることを明らかにした。28年度は、アレルギー性鼻炎モデルにおいて、エフェクター/メモリーCD4 T細胞が鼻炎誘導時に鼻粘膜に顕著に浸潤することを示した。さらに、リンパ球が感作される場と考えられる鼻咽頭関連リンパ組織 (NALT) ではCCR3およびCCR10 mRNAの発現が上昇し、鼻粘膜に浸潤したCD4 T細胞の一部がCCR3またはCCR10を発現することを見いだした。そこで、CCR3とCCR10のリガンドCCL28の発現を検討した結果、鼻粘膜上皮で亢進を認めたことから、エフェクター/メモリーCD4 T細胞はCCL28とCCR3/CCR10により鼻粘膜に浸潤する可能性が示された。
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