研究課題
C型レクチン受容体MincleとMCLは結核菌の細胞壁に存在する糖脂質TDMを認識して、宿主免疫応答を惹起する。両分子はどちらもTDM応答および結核菌排除に必須であることから、非冗長性の役割を果たしていると考えられた。MCLはMincleと比較してTDMに対する結合力が極めて弱いことから、直接的なTDM認識受容体以外の機能を果たしているのではないかと推測して検討を行い、MCLがMincleの発現を制御していることを見出した。MCLはstalk領域の疎水性アミノ酸残基を介してMincleと相互作用することで、Mincleの細胞表面発現を安定化していた。当該疎水性残基を親水性アミノ酸に置換すると、両分子の相互作用が破綻して、Mincleの発現量が減少し、TDMに対する適切な免疫応答ができなくなった。一方で、MCLのTDM認識に重要な領域を変異させても、TDM応答には影響がなかった。以上の結果より、MCLは直接的なTDM認識受容体として機能しているのではなく、Mincleの安定化を介してTDM応答に寄与していることが明らかとなった。結核菌感染の実験動物モデルであるモルモットのMCLは突然変異により、TDM認識領域の一部を欠如しておりTDMを認識できないが、モルモットMincleとの相互作用能力は保持していた。このことは、MCLの主たる機能がTDM認識ではなく、Mincleとの相互作用による安定化である可能性を強く支持している。共同研究により、MincleおよびMCLの相同分子であるDectin-2が結核菌のリポアラビノマンナンを認識して、宿主免疫応答を惹起することを見出した。これまではSIGNR1がリポアラビノマンナンの受容体と考えられてきたが、SIGNR1欠損マウスを作製して当該分子の寄与は低いことを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
本研究課題により得られた成果を海外の学術誌Journal of ImmunologyおよびImmunityに投稿し、受理された。
MCLとMincleの相互作用における安定化機構を分子レベルで明らかにし、新規ワクチンアジュバントの分子標的としての可能性を模索する。
実験方法を改善して使用試薬を倹約したことにより、消耗品購入費が予定よりも少なくて済んだため。
試薬購入等の物品費として使用する。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 2件) 図書 (1件)
Journal of Immunology
巻: 未定 ページ: 未定
Immunity
巻: 41 ページ: 402-413
10.1016/j.immuni.2014.08.005. Epub 2014 Aug 28.
医学のあゆみ
巻: 250 ページ: 287-288