研究課題/領域番号 |
25460594
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
吉田 裕樹 佐賀大学, 医学部, 教授 (40260715)
|
研究分担者 |
原 博満 佐賀大学, 医学部, 准教授 (20392079)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 自然免疫 / 原虫 / ITAM受容体 / CARD9 / Th1 |
研究概要 |
本研究では、寄生虫のうち、原虫を認識する自然免疫受容体とそのリガンドの同定を目指した。原虫としてLeishmania majorを用い、これをITAM受容体の下流でアダプター分子として機能するCARD9欠損マウスに感染させたところ、感染抵抗性の減弱を認めたため、この経路がL. major感染に対する自然免疫を担っていることが確認された。CARD9欠損マウスでは、感染初期には感染部位における炎症性サイトカインの発現低下を認め、また感染後期においては、Th1型の免疫反応の誘導に障害を認めたため、CARD9に依存する自然免疫が引き続くTh1型免疫の誘導に重要な役割を担っていることが示された。CARD9の上流に位置する受容体に関しては、ITAM受容体の可溶型蛋白ライブラリーを作成し、この原虫への結合能を指標に候補受容体を検索したところ、複数の受容体の結合が確認された。このうち一つの受容体に関して解析を進めたところ、この受容体は原虫表面の糖鎖を認識している可能性が示された。現在、リガンドの同定を目指すとともに、この受容体の自然免疫活性可能、およびTh1型免疫誘導能などを解析している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
L. major感染に対する初期防御の一部をCARD9依存性経路が担っていることが確認され、原虫感染には細菌やウイルス感染とは異なる自然免疫が重要であることが示された。さらに、この原虫の排除に重要であることが示されている、Th1型免疫の誘導にCARD9依存性経路が重要な役割を果たしていることも確認できた。認識受容体に関しては、候補受容体が複数同定された。ただし、用いたITAM受容体ライブラリーは完全な物ではない(受容体はきわめて多数存在する)ため、また、原虫は生活環におけるステージごとに異なる分子(または、同一分子上に異なるエピトープ)を表面に発現している可能性が高いため、ライブラリーの拡充と、さらなる受容体の同定が必要である。同定された受容体候補に関しては、糖鎖を認識する可能性が示されており、これは当該受容体のこれまでに報告されたリガンドの性質と合致するため、この受容体が原虫上の糖鎖(を持つ分子)を認識している可能性が高いと考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
成果・達成度に示したように、L. major感染におけるCARD9依存性自然免疫活性化経路の重要性が示された。本経路の詳細について、受容体以下のシグナル伝達経路を解明するため、Sykなどのリン酸化酵素やMAPキナーゼ・NF-kBの活性化などを解析し、また欠損マウスを用いるなどして、シグナル伝達経路を解明する。また、感染初期における炎症性サイトカインやケモカインの産生・発現を解析することにより、本経路の機能を明らかにしていく必要がある.具体的には、引き続くTh1型免疫を誘導するために必要なサイトカイン・ケモカインや、これらの発現に関わるシグナル伝達経路を明らかにしていく。受容体に関しては、ライブラリーの拡充を図り、また原虫の生活環(宿主に侵入するステージ、また宿主内で増殖するステージ、宿主内で播種されるステージ)を視野に入れて受容体とリガンド候補の同定をさらに進める。 L. majorはTh1型免疫を誘導することで実験的によく用いられている原虫であるが、これら以外の原虫、マラリア原虫やトキソプラズマ原虫などを用いて、同様のアプローチによりCARD9経路、あるいはそれ以外の自然免疫活性化経路の関与を検索、また受容体やリガンドの同定を進める必要がある。
|