研究課題/領域番号 |
25460600
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
桑原 卓 東邦大学, 医学部, 講師 (40385563)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アセチル化修飾 |
研究概要 |
サイトカイン受容体刺激に応答する情報伝達系の分子修飾を解析する目的で、T細胞株CTLL-2細胞をインターロイキン2(IL-2)で刺激し、チロシンキナーゼJAK1とJAK3および転写因子STAT5について解析した。既に充分に解析されているように、これらの分子のリン酸化が刺激早期から認められた。STAT5の充分なリン酸化が認められた刺激後10分の細胞から、抗JAK1、抗JAK3および抗STAT5のそれぞれの抗体で免疫沈降画分を調製した。それらを抗アセチル化リジン抗体を用いたイムノブロット法で解析したところ、アセチル化されたJAK1、JAK3およびSTAT5が検出された。 細胞の刺激状況によりSTAT5は、細胞質→受容体(細胞質膜近傍)→核へと移行するため、アセチル化される細胞内局在の候補は複数となる。一方で、JAKは受容体に結合している。このことから、この系で観察されている現象は受容体の細胞質内領域で生じている可能性が考えられた。IL-2受容体はα鎖、β鎖およびγ鎖で構成される。β鎖あるいはγ鎖の抗体を用いて調製した免疫沈降画分にアセチルトランスフェラーゼ活性が認められた。質量分析計を用いた解析から、この画分にアセチルトランスフェラーゼCBPが含まれていることを見出した。 CBPは通常核に局在する。IL-2刺激に応答し核外輸送されたと考えられる。IL-2受容体下流では多くの経路が活性化される。どの経路がCBPの核外輸送に重要であるかを解析した。受容体β鎖に結合するアダプター分子Shcを端緒とする分子機構がそれを担っていることが明らかとなった。 一連の解析の中でC末端側のリジン残基がアセチル化されたSTAT5は限定消化されることを見いだした。アセチル化の標的リジンを他のアミノ酸に置換した変異STAT5は消化されにくいことから、限定分解はアセチル化依存性に生じるらしいことが判った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々の予備検討でIL-7受容体情報伝達系でもSTAT5などのアセチル化が観察されていた。本来はIL-7受容体系で認められたアセチル化が、標的タンパク質の機能をいかに調節するかを解析する予定だったが、受容体サブユニットを共有するIL-2受容体の系を実験モデルとした解析を先行させた。その結果、「研究実績の概要」に示したように、核内タンパク質以外でもアセチル化されることやそれに付随する基礎的知見を明らかにすることが出来た。これらは「研究の目的」に向かうためには不可欠の実験的結果であると判断している。 ここで得られた結果は、まとめて投稿すると同時に「今後の研究の推進方策等」に示した展開の基礎とする。
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今後の研究の推進方策 |
それぞれがオーバーラップする部分もあるが、以下の3項目を柱として推進する予定である。 1) IL-2受容体で認められたCBPの核外輸送および受容体下流の情報伝達分子群のアセチル化が、IL-7受容体をはじめとする他の受容体でも共通して観察される生物学的現象であるのかについて明らかにしていく。 2) 通常は核内でヒストンを中心にDNA結合タンパク質のアセチル化を触媒するCBPが、局在を替えて細胞質のタンパク質をアセチル化することが、細胞機能や細胞運命にいかに関与するかについて検討する。具体的には、細胞質に局在可能な組換えCBPをCTLL-2細胞やBaF細胞で発現させる。 3) IL-7はリンパ球分化において、必須の役割の担うサイトカインである。IL-7受容体情報伝達でのアセチル化STAT5とリンパ球分化の関係性について解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の目的を多少の前進的変更を加えながら研究を進めたが、支給額1,100,000円のうち17,825円の残高が生じた。多額の増減となったわけではないので、予算計画に沿った順調な収支状況と考えている。 順調に進めば、2014年度中に一つめの論文の投稿となる。併せて国際学会での発表も予想されるので、直接経費の「旅費」や「その他」から投稿経費や航空費用などの支出が今年度に予想される。
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