研究課題
基盤研究(C)
mTOR complex 1 (mTORC1)は、成長因子や栄養・エネルギー状態など細胞内外の環境情報を統合し、成長や増殖、代謝などの細胞機能の制御のみならず、免疫機能の制御に関与していることが分かってきた。本研究は、獲得免疫反応における樹状細胞とB細胞のmTORC1の役割を明らかにすることを目的とした。所属研究機関の変更などの理由で、当初使用予定の樹状細胞特異的mTORC1機能欠損マウスが使用できず、本年度はB細胞特異的mTORC1機能欠損マウス(RaptorB-/-)を用いた解析を行った。RaptorB-/-マウスでは、脾臓やリンパ節、腹腔といった末梢におけるB細胞が欠失しており、骨髄においてはB細胞分化がpro-B細胞の段階で止まっていた。驚いたことに、RaptorB-/-マウスでは血中のIgMやIgGが検出されないにも関わらず、産生量はコントロールに比べて1/4と低いものの血中および糞便中にIgAが検出された。また、コレラトキシンで免疫するとRaptorB-/-マウスの糞便中のtotal IgAの量は増大するものの、コレラトキシン特異的抗体は検出されなかった。以上のことから、mTORC1はB細胞の分化、およびIgMやIgGの産生、抗原特異的IgA産生に必要であることが示唆された。
3: やや遅れている
研究計画で使用予定だった遺伝子改変マウスが所属研究機関の変更などの理由で使用できず、樹状細胞におけるmTORC1の役割解明が進行していない。しかし、別の遺伝子改変マウス(RaptorB-/-)を用いた解析から、B細胞のIgA産生を伴う獲得免疫反応にmTORC1が関与していることが示唆され、一定の成果は得られた。
遺伝子改変マウス(樹状細胞特異的mTORC1昨日欠損マウス:CD11c-Cre x Raptor flox)の準備を早急に進めるとともに、代替策としてmTORC1阻害剤をマイクロパーティクルに封入して個体に投与し、樹状細胞のmTORC1を阻害するという既に確立されている方法を用いる実験を計画している。
当初予定していた遺伝子改変マウスの準備ができず、関連した実験が遂行できなかったことから消耗品費が計画より低額となり、その分が次年度に繰り越された。本年度に行えなかった分の遺伝子改変マウスを用いた解析を次年度に行うため、助成金の多くは実験動物費および消耗品費(プラスチック製品、サイトカインなど)に当てる。本年度の実験の遅れを取り戻すためには、必要ならば出張旅費を計画より減らし、消耗品費に当てるといった対策を行う予定である。
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Proc. Natl. Acad. Sci. U S A.
巻: 111 ページ: 3805-3810
10.1073/pnas.1320265111