研究課題/領域番号 |
25460603
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研究機関 | 兵庫医療大学 |
研究代表者 |
田中 稔之 兵庫医療大学, 薬学部, 教授 (30217054)
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研究分担者 |
上田 晴康 兵庫医療大学, 薬学部, 教授 (10330458)
大野 喜也 兵庫医療大学, 薬学部, 助教 (40509155)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 免疫学 / 細胞動員 / 血管内細胞 / 自然免疫 / 獲得免疫 / 微小環境 / 細胞接着分子 / サイトカイン |
研究実績の概要 |
本研究は、免疫細胞のリンパ組織への動員と組織内遊走の自己応答性の制御における意義の解明と末梢組織に形成される免疫制御性の微小環境(炎症性微小環境やがん微小環境)がこれに及ぼす影響を明らかにすることを目的としている。本年度は腫瘍が形成する免疫制御性の微小環境が免疫細胞の機能や癌の幹細胞性に及ぼす影響について解析した。ヒト悪性中皮腫細胞(MSTO)をスフェア形成条件で培養するとaldehyde dehydrogenase (ALDH) 陽性で幹細胞関連遺伝子を発現する癌幹細胞様細胞が濃縮され、移植実験において強い造腫瘍性を示す。そこで、免疫制御性の微小環境の形成に関与しうるサイトカイン経路について解析した結果、スフェア形成条件下のMSTOはactivin-Aを産生し、スフェア中に濃縮されるALDH陽性細胞にactivin-A受容体ALK4が発現することが示された。抗 activin-A抗体やMSTOに発現するALK4のノックダウンはMSTOのスフェア形成には影響しないが、スフェア中のALDH陽性を著しく減少させた。また、ALK4をノックダウンしたMSTOには造腫瘍性の低下が認められることから、activin-A とその受容体を介するシグナルはスフェア形成条件下のMSTOに濃縮されるALDH陽性細胞の維持とその造腫瘍性に重要な役割を果たすことが示唆された。また、MSTOが形成する腫瘍はマクロファージ浸潤を伴うがん微小環境を形成する。そこで、MSTOと免疫細胞の機能的な相互作用を解析した結果、MSTOは共培養によりヒト単球様細胞株THP-1にTGF-betaなどの産生を誘導し、M2マクロファージ様細胞に変換することが示唆された。これらの結果から、造腫瘍性を有するMSTO細胞は特定の細胞集団に幹細胞性を維持させるとともに、積極的に周囲の免疫細胞の機能を修飾して免疫制御性の微小環境を形成している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度はがん細胞が形成する免疫制御性の微小環境が免疫細胞の機能やがん細胞の幹細胞性に及ぼす影響について解析し、造腫瘍性を有する悪性中皮腫細胞が細胞集塊中の特定の細胞集団に幹細胞性を維持させつつ、積極的に周囲の免疫細胞の機能を修飾して免疫制御性の微小環境を形成している可能性を示す知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度はがん細胞による免疫細胞の機能的特性の制御とがん幹細胞性の維持に関する分子機構について解析を行った。今後はこれらの知見を発展させ、当初計画に沿ってリンパ組織やがん組織への制御性細胞の動員とその組織微小環境による制御について解析したい。また、がん細胞が作り出す免疫制御性の微小環境が局所リンパ組織における細胞動員シグナルの発現や自己応答性の制御に及ぼす影響についても解析を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度はがん細胞による免疫細胞の機能修飾とがん幹細胞性の維持に関する基礎的な解析を行った。平成26年度は当初計画に比し、細胞培養などに関する新規品目を少なく抑えることができたため、次年度使用額が生じている。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は設定した研究期間の最終年次にあたる。平成26年度までの実績を踏まえ、当初からの研究目的の達成をめざして本予算を効率的に使用する計画である。
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