研究課題
本研究は、免疫細胞のリンパ組織への動員と組織内遊走の自己応答性の制御における意義の解明と末梢組織に形成される免疫制御性の微小環境(炎症性微小環境やがん微小環境)がこれに及ぼす影響を明らかにすることを目的として実施した。本年度はがん微小環境に注目した解析を行い、ヒト悪性中皮腫細胞(MSTO)において、癌幹細胞様細胞の濃縮を促進するスフェア形成にCD44とそのリガンドHAが重要な役割を持つことが示された。またがん微小環境におけるエフェクターT細胞の自己反応性を制御する抑制性受容体であるPD-1の発現機構を解析した結果、Jurkat T細胞におけるPD-1発現にカルシウムシグナルが重要であることが示された。研究期間全体を通じて、以下の成果が得られた。1)リンパ球の接着や血管外遊走に関与する細胞接着分子 nepmucin/CD300LGは、生理的条件下で多くの組織の細動脈・細静脈・毛細血管に発現するが、急性炎症を惹起したリンパ節ではその発現が急速に減弱し、この発現の減少にTNFαが関与することが示唆された。また腫瘍組織においてもnepmucin/CD300LGの発現が減弱することから、nepmucin/CD300LGは炎症および腫瘍が形成する微小環境で発現が制御されることが示された。2)免疫細胞の自己反応性を制御するがん微小環境の形成について解析し、MSTO細胞において、CD44/HA系とActivin-A/ALK4系がそれぞれスフェア形成とスフェア内でのALDH陽性がん幹細胞様細胞の維持に重要であることが示された。ALK4のノックダウン実験から、MSTOスフェアに濃縮されるALDH陽性細胞が造腫瘍性に重要であることが示された。また、がん微小環境中でエフェクターT細胞の自己反応性を制御するPD-1の発現にカルシウムシグナルが重要であることが示唆された。
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Blood
巻: 125 ページ: 3928-3936
10.1182/blood-2014-06-580993