研究課題
基盤研究(C)
本年度はIgM受容体(FcμR)がB細胞の生存を促進する分子機構について解析を行い、以下の結果が得られた。1)FcμRとB細胞受容体(BCR)が物理的に相互作用することを明らかにした。脾臓B細胞を可溶化し、抗IgM抗体を用いてBCRを免疫沈降した後、FcμRの共沈をウエスタンブロットで確認できた。逆に、抗FcμR抗体を用いてFcμRを免疫沈降した後、BCR及びBCRに会合するIgαの共沈をウエスタンブロットで確認できた。2)FcμR架橋によるBCRシグナルへの影響を解析した。BCR架橋により、古典的NF-κB活性化経路の指標であるIκBのリン酸化、及び非典型的活性化経路の指標であるp52の生成、さらにB細胞の生存を促進するBCL-xLの発現が誘導されることが知られている。そこで、BCR架橋に加え、FcμRを同時に架橋したところ、IκBのリン酸化には影響がなかったが、p52の生成が促進され、さらに、BCL-xL蛋白の発現が上昇することを見出した。興味深いことに、BCR架橋をせずに、FcμRのみ架橋した場合、IκBのリン酸化、p52の生成及びBCL-xL蛋白の発現上昇のいずれも誘導されなかった。即ち、FcμRは、それ自身単独ではNF-κB経路を活性化できないが、BCR刺激によって誘導される非典型的NF-κBの活性化を促進することが判明した。これらの結果から、FcμRはBCRと会合することにより、抗原刺激を受けたB細胞の活性化を特異的に促進できることが示された。また、FcμRと補体受容体(CD21)の役割分担を解明するために、FcμRとCD21の二重欠損マウスの樹立を進めている。さらに、FcμRが自己反応性B細胞のアナジー誘導に果たす役割を解析するために、FcμR欠損とsHel/Hel-Igマウスの掛け合わせマウスの樹立も進めている。
1: 当初の計画以上に進展している
計画した実験は全て予定通りに実施され、FcμRがB細胞の生存を促進するメカニズムを解明した。
今後は学術研究助成金の研究計画に従い、FcμRとCD21の二重欠損マウスを用いて、液性免疫の制御におけるFcμRとCD21の役割分担を解明する。さらに、FcμR欠損とsHel/Hel-Igマウスの掛け合わせマウスを用いて、FcμRが自己反応性B細胞のアナジー誘導に果たす役割を解析する。
平成26年度は2種類の掛け合わせマウスの解析を行う予定で、多額なマウス飼育費及び解析費用が必要なため、平成25年度での実験費用を最小限に抑えた。マウス飼育費、免疫応答の実験費用、自己免疫疾患の解析費用など
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