研究課題
前年度までに濾胞B細胞の生存と活性化に果たすFcμRの役割を明らかにした。FcµR欠損マウスでは、辺縁帯B細胞(Marginal zone B、MZB)が顕著に減少することが判明していたが、そのメカニズムが不明であった。今年度は、MZBの生存、成熟、分化および活性化に果たすFcμRの役割を中心に解析を進めた。MZBはT1 → T2 → MZP → MZBという分化段階を辿ることが知られている。生後3週、6週および9週のマウスにおけるこれらの分化段階の細胞について解析したところ、FcμR欠損マウスでは生後3週からT1とT2が減少し始め、生後6週からMZPも減少し、生後9週からMZBが顕著に減少していた。また、生後9週以降のFcμR欠損マウスでは、MZBが生体内で死にやすいことも判明した。これらの結果から、FcμR欠損マウスにおけるMZBの減少は、MZBの分化経路の異常とMZBの生存低下が原因であることが示唆された。WTマウスのMZBに比べ、FcμR欠損マウスのMZBはIgDとMHC class IIの発現が亢進しており、さらにLPS刺激による抗体産生細胞への分化能が低下していた。これらの結果から、FcμRは、MZBの初期分化、成熟と生存のみならず、活性化や抗体産生細胞への分化にも重要な役割を果たしていることが判明した。現在、FcμR欠損マウスにおけるMZBの異常と自己抗体産生の関係について解析を進めている。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)
Nature Commun.
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