研究課題
基盤研究(C)
近年、高機能かつ高額なシミュレータが多くの医学教育機関に導入されたが、心臓聴診に関する最近の海外の研究によれば、心臓病診察シミュレータを用いた学習が、必ずしも学習者のアウトカムを向上させていない(Norman et al. Med Educ. 2012、Giovanni et al. 2009)。我々は、医学部4年生全員を対象とする必修の授業として、心臓病診察シミュレータを用いた少人数実習を行っているが、3時間1回の学習では、実際の臨床現場で必要とされるアウトカムには達していないことを報告した。今回の研究目的は、よりアウトカムを重視した心臓聴診実習法を開発すること、さらにはシミュレータと繰り返すシナリオベース・トレーニングにより、総合的な心臓病診察能力を高める学習プログラムを開発することにある。医学部4年生全員118名を対象とした心臓病診察シミュレータを用いた少人数実習を行った。この中で1回目のテストでは、学生に2音、過剰心音あるいは心雑音に関する問題であることを予め周知してからそれぞれを出題した。より臨床現場に則して出題される2回目のテストでは、2音、過剰心音、心雑音のどれに関する問題かを学生に知らせずに無作為に出題した。1回目の正答率は平均74.7%、2回目の正答率は63.0%であり、2回目が低かった。2音に関する問題では、1回目も2回目も最も正解率が低かったのは「分裂無し」(1回目73.7%、2回目44.7%)であった。過剰心音に関する問題で最も正解率が低かったのは、1回目は3音+4音(66.1%)、2回目は4音(52.3%)であった。心雑音で最も正解率が低かったのは1回目が大動脈弁閉鎖不全症(73.7%)、2回目が僧帽弁狭窄症であった(60.7%)。特に実際の臨床現場に則して出題される2回目のテストの成績が悪く、これを改善するための介入の必要性が明らかとなった。
3: やや遅れている
平成25年度中に医学生または初期研修医の有志を募り、心臓病シミュレータを用いた学習トレーニングを繰り返し、アウトカムの改善を図るプロジェクトを開始する予定であったが、参加者の集まりが遅れており、同年度中には開始できなかった。現在、鋭意準備を進めているところである。
平成26年度も医学部4年生全員を対象とした心臓病診察シミュレータ、イチローを用いた少人数実習を行う。この中で1回目のテストでは、学生に2音に関する問題、過剰心音に関する問題、さらには心雑音に関する問題であることを予め周知してからそれぞれを出題する。より臨床現場に則して出題される2回目のテストでは、2音、過剰心音、心雑音のどれに関する問題かを学生に知らせずに無作為に出題する。このときテストの前の実習で介入を行い、1回目および2回目のテストの結果が改善するかを検討する。介入の有効性を検討するために前年度までに実施した聴診トレーニングで得られた1回目および2回目のテストの結果と比較する。さらには、平成26年度中に医学生または初期研修医の有志を募り、心臓病シミュレータを用いた学習トレーニングを繰り返し、アウトカムが改善するか否かを検討する。アウトカムが改善する学習トレーニングの回数のみならず、実習のアウトカムを改善する介入方法を明らかにする。
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