乳がん個別化医療における治療方針支援技術の経済評価研究の第3年度の研究として、治療方針決定支援技術として国際的に最も研究が進んでいる多遺伝子アッセイの最新技術の経済評価研究を進めた。わが国で開発が進んできており実用期に入りつつある95遺伝子アッセイについて、日本の保険診療への導入の文脈での費用効果分析を行った。 第2年度に入手していた95遺伝子アッセイの経済評価を行うために必要不可欠な、標準診療と95遺伝子アッセイに基づいた診療との比較が可能になる患者群の再発予後データの症例追加を行った。提供を受けていた開発時のValidation studyのデータでは、経済モデルに投入する遷移確率の推定には症例数が不十分であったため症例を追加した。 競合する先行技術である21遺伝子アッセイや70遺伝子アッセイについて自身が報告してきた経済モデル(Kondo et al. Breast Cancer Res Treat. 2012;133(2):759-68,Kondo et al. Breast Cancer Res Treat. 2011;127(3):739-49)を、関連した最新の報告(Yamauchi et al. BMC Health Serv Res. 2014;14:372.)等によってアップデートした。 その結果、95遺伝子アッセイを日本の保険診療への導入することに伴う費用と効果から得られる増分費用効果比は概ね1質調整生存年獲得当たり500万円以下になり、新しい保健医療サービスに対する社会的な支払い意思額の目安を下回り、費用対効果に優れることが明らかにされた。 この研究は、欧米で標準化している21遺伝子アッセイよりも優れていることが示されつつある国産技術の95遺伝子アッセイに関して、その普及の鍵となる経済評価研究であり、有意義なものである。
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