老年医学教育に関する調査研究とシミュレーション教材の開発研究を行った。 全国80医科大学・医学部に対する老年医学教育の内容の調査として、倫理委員会の承認を得て、2014年12月にアンケートを各医科大学医学部に送付し、得られた回答を解析したところ、老年医学を専門に教育する部門のある大学は21%で10年前と比較して9%減少しており、高齢者総合機能評価等の重要事項が十分教育されていないことが分かった。その内容を2015年のヨーロッパ医学教育学会(英国、グラスゴー)で発表し、現在は論文作成中である。 出身大学別の研修医の学習到達度調査に関しては、倫理審査委員会の承認を得て、2014年12月と2015年3月に本学研修医に対してアンケート調査を実施したところ、老年科のある大学の方が老化の機序や高齢者総合機能評価などが良く教育され、研修医の自己評価での理解度も高かった。この結果を2015年7月の日本医学教育学会総会で発表し、現在、論文作成中である。 老年医学シミュレーション教育に関しては、本学医学科4-5年のプレ・クリニカル・クラークシップの老年医学実習において、認知症シミュレータを新たに導入し、その教育効果について学生アンケートを行ったところ、教育効果が高いことが分かった。この結果を2016年6月の日本老年医学会学術集会と8月のヨーロッパ医学教育学会(スペイン、バルセロナ)で発表した。 シミュレーション教育の教材開発については、本学で開発したSIMTOOLを用いて、改訂長谷川式認知症スケール等の演習用ソフトを作成した。また反転授業用ビデオ教材も作成して、認知症の医療面接に関する模擬患者の年齢が学生に与える影響や反転授業実習の教育効果について調査した。前者については2016年7月の日本医学教育学会と9月の日本シミュレーション医療教育学会で発表し、後者については現在解析中である。
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