研究課題/領域番号 |
25460618
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
北田 雅 京都大学, 経済学研究科, 講師 (00422949)
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研究分担者 |
後藤 励 慶應義塾大学, 経営管理研究科(日吉), 准教授 (10411836)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 新医師臨床研修制度 / 初期研修医 / 経済的損失 |
研究実績の概要 |
2004年に導入された新医師臨床研修制度の下、基本診療科を網羅する診療科巡業形式の研修が必修化された。診療知識や診療技術の未熟さ等に加え、巡業先診療科への適応不順による精神的負担等により、研修医の4割程度が少なからずうつ傾向に陥る事が知られている。看護師においては診療報酬改定により「入院患者7:看護師1」の新基準が求められる現状において、新卒看護師の早期離職率は8.9%と9人に1人の割合となっており、メンタルヘルス問題が立ち去り型サボタージュ問題に影響している可能性が示唆されている。本研究では、医療従事者のメンタルヘルス問題による経済的損失の分析を行うと共に、うつ関連症状から欠勤に至る初期研修医・新人看護師の研修指定病院へのアンケート調査によるメンタルケアの予防・対策法を呈示し、経済・社会学的な観点からの問題提起を行う事を目的としている。 うつ病の患者数は近年増加傾向にあり、その経済的損失は、2008年度の1年間の概算で約3兆円という結果であった。この費用の削減のためには、患者の受療率を高めるとともに、有効な介入法を広く提供できるような体制を整備することが重要であることが示唆されている。(厚生労働省「精神疾患の社会的コストの推計」 事業実績報告書)) その一方、過去12ヶ月間のうつ病の経験者のうち、7割強の患者は医療機関に相談していない (Naganuma et al. 2006)。所属病院の精神科・心療内科への受診は心理的ハードルが高いことが推察される一方、院内教職員向けに心理専門職を配備した相談室を設置している病院は非常に少ない。昨年度は、これに基づき、医師養成課程に生じる費用、医師のabsenteeismに関する費用、心理専門職雇用に関する費用等について、研究分担者である後藤励氏とともに分析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
テスト・バッテリーによる性格特性分析とその経時的変化、テスト・バッテリーで得られた特性とうつ関連症状発症の関連性の分析、国内外モデル病院及びその協力関連病院における初期臨床研修医の後期臨床研修への定着率や後期臨床研修医採用実績についての意見交換等に関する総括に時間を要している。研修プログラム及び心理的サポート改善については、病院の調査等を研究分担者である後藤励氏と共に開始している。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに行った3つの分析(初期臨床研修医・新卒看護師の欠勤、離職による経済的損失の分析、新医師臨床研修制度下における臨床研修指定病院の経営分析、指導医・指導看護師からの評価分析による性格-問題行動の関連性分析)については、総括を継続する。 今後、医師、看護師育成費用の試算、うつ病性障害の医療従事者の経済的損失、患者のうつ病の受療率を高めるとともに、有効な介入法を広く提供できるような体制を整備するための心理専門職雇用費用等の分析を深めていく。上記は、それぞれ研究分担者後藤励氏、ならびに連携研究者である菅佐和子氏と共に行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
テスト・バッテリーによる性格特性分析とその経時的変化、テスト・バッテリーで得られた特性とうつ関連症状発症の関連性の分析、国内外モデル病院及びその協力関連病院における初期臨床研修医の後期臨床研修への定着率や後期臨床研修医採用実績について意見交換等に関する総括に時間を要しているため。
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次年度使用額の使用計画 |
テスト・バッテリーによる性格特性分析とその経時的変化、テスト・バッテリーで得られた特性とうつ関連症状発症の関連性の分析に関する総括に関しては、平成29年度初頭2ヶ月にて取りまとめる。国内外モデル病院及びその協力関連病院における初期臨床研修医の後期臨床研修への定着率や後期臨床研修医採用実績について意見交換等に関する総括に関しては、次の2ヶ月にて取りまとめる。
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