本研究の目的は、メンタルヘルスに問題を抱え欠勤や離職を来す初期臨床研修医や新卒看護師の性格特性の特定や、主にメンタルヘルス問題に起因する欠勤や離職による経済的損失の分析、新医師臨床研修制度下における臨床研修指定病院の経営分析、そして国内外のモデル病院における職員のメンタルヘルス環境改善に関する取組の分析と評価を行うものである。具体的な方法としては、研修指定病院へのアンケート調査や、分析結果より演繹されるメンタルケアの予防・対策法を提示し、経済・社会学的な観点からの問題提起を行うことを目指している。 平成30年度では、昨年度に引き続き、看護師養成課程に要する費用に加え、病院経営においても大きな問題となる看護師の頻回な欠勤問題により生じうる費用、他に心理専門職雇用に関する費用、患者の受療率を高める体制整備費用等について、研究分担者である慶應大学・後藤励氏と共に分析を行った。特に自己肯定感や人間関係構築に問題を生じる看護師において、バーンアウトやうつ的症状による生産性の低下やヒヤリハット事例の頻発が問題となっていた。看護師養成費用は、国立の専門学校(3年)と私立大学(4年)では学費負担に約10倍程度の差がある等の知見が得られている。近年、看護師を含めた医療系従事者養成のための四年制大学学部新設が相次いでいる。社会の要請もあり今後もこの傾向は継続するとみられるが、従来その養成は専門学校によって担われており、病院附属として設置され独自の奨学金制度により実質的に費用負担が少ない場合も多かった。この点を鑑みるに、現在の学費負担の差は更に大きいものと考えられる。 平成16年度に改訂された新医師臨床研修制度は、見直しをされた。その内容は医師偏在に加え、研修科目数の調整や指導医の質保証、研修医のモチベーションの維持等である。現在見直し前後の初期研修医のメンタルヘルス問題について取扱いを行っている。
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