研究課題/領域番号 |
25460619
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
瓜生原 葉子 京都大学, 政策のための科学ユニット, 助教 (70611507)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 移植医療 / 社会価値 / 意思決定 / 実証研究 / 利他行動 / メディアの機能 |
研究概要 |
日本の臓器提供不足は,医学的,経済的,法律的,国際的な問題を包括する深刻な社会問題であり,臓器提供の増加と質の向上を目指した社会基盤を確立することを一連の研究の最終目標としている。本研究では,移植医療の社会価値,および人々が臓器提供について考え意思表示を行うメカニズムについて明確化し,臓器提供に関する意思決定が円滑に行える社会のしくみを学術的・実践的に導出することを目的としている。 平成25年度は,移植医療の社会価値を構成する要素,意思表示に関する行動変容メカニズム,および一般への知識提供の媒体としてのメディアの機能についての探索的研究として,先行研究調査,インタビュー調査を行った。 移植医療の社会価値に関しては,移植医療の歴史に関する先行研究レビューを海外学術論文誌に投稿し,掲載された。メディアの機能に関しては,先行研究調査結果,マスメディアキャンペーンのみでは行動変容の有効性が低く,個人間メッセージの重要性,SNSの効果が示唆された。これらを国内外の学会で発表した。意思表示の行動メカニズムに関しては,先行研究,および国内の一般14名を対象としたインタビュー結果,「利他行動」の重要性が示唆された。そこで,一般12名を対象とした利他行動に関するワークショップを開催し,そこから得た知見も考慮し,意思表示行動変容メカニズムについての仮説を導出した。また,本仮説の検証について国際比較調査を計画しているため,調査対象国の制度と医療専門職の人的資源管理についての分析を行い,国内・国際学術論文誌に投稿し,掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
探索的研究のスコープを拡大,深化させたために時間を要し,国際アンケートによる量的調査を実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
意思表示行動変容メカニズムについては,探索的研究で導出した仮説の実証のため,6か国を対象とした国際アンケートによる量的調査を実施する。その統計分析を行い,分析結果の解釈の是非,および知見を得るため,対象国の専門家を対象としたインタビューを行う。また,以上の知見に探索的研究をも包括し,国内・国際学会に投稿する予定である。 移植医療の社会会情報の構築に関しては,臓器提供増加のための諸活動に対する投資と,臓器移植増加に伴い削減された医療費を比較し,社会全体の医療費削減が認められたドイツ,カナダの事例を参照し,日本において臓器提供増加の諸活動に必要な投資について分析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
H25年度は,探索的研究に注力し,国際アンケートによる量的調査,ならびに,国外におけるインタビューを実施できなかったため。 H25年度にに実施予定であった,国際アンケートによる量的調査,ならびに,対象国(スペイン,フランスなど対象国)におけるインタビューに係る費用を平成26年度に使用する予定である。
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