当該研究の対象は、健康人ボランティア、医師、倫理審査委員会委員、CRC等医療スタッフ、一般人、医学部・薬学部学生、がん患者等であり、多様な立場からの意見を解析した。我々は、新規医薬品の開発により多大な恩恵を受けているが、未承認の薬を健康なヒトに投与して安全かどうかを検討するための試験で健康人ボランティアが必要であることは、一般には広く周知されていないことがわかった。こうした試験を倫理的観点からすべきでないとする意見や、その実施には倫理審査委員会で審査され、被験者の自由意思での参加が求められるが、その過程に少数であるが疑問を感じる者がいることも明らかになった。First in man試験参加のリスクについて、臨床試験に被験者として参加する立場の健康人ボランティアと臨床試験を実施する立場の医師は、低いと考える一方、臨床試験を支援する立場でありかつ臨床試験をよく知っているCRC等医療スタッフはより高いと考えていることがわかった。健康人の参加報酬については、危険度に見合った金額を支持する意見が最も多かった。金銭による誘導はすべきではないと倫理審査委員会では考えられているが、一般的にはそのように考えられていない。健康人対象First in man試験参加動機について、金銭が最も高い割合を示したが、医学貢献や患者さんの助けになるなどの意見が少数ながらみられた。がん患者を対象としたFirst in man試験参加動機については、自分の治療につながると考える意見が多かったが、がん患者・家族からは、将来、わたしと同じ病気の方の治療に役立ててほしいからとする意見も多く聞かれた。これらの結果は、人間の利他主義的な考えが臨床試験にも垣間見られたのではないかと推測した。新規医薬品開発のイノベーションが叫ばれる中、これらの結果をどのように臨床試験の現場で反映させていくかが、次に問われることになる。
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