本研究では岡山大学で平成21年度から導入された地域医療教育が医学生の共感性及び臨床能力に及ぼすアウトカムの評価を行い、アウトカム基盤型の地域医療教育カリキュラム策定への提言を行う。平成27年度の研究成果の概要は以下に示す。 1. e-ポートフォリオの解析:地域医療実習の期間e-ポートフォリオを利用して学生が振り返りを入力し、それに対し教員がフィードバックを行っている。平成26-27年に地域医療実習に参加した学生182名(1-4年)に対し、ポートフォリオの記載及び教員のフィードバックの有用性について5件法にて聴取した。各学年における自身の振り返りに対する評価の平均点は、1年4.4、2年4.0、3年4.7、4年4.0であり、教員のフィードバックに対する評価の平均点は、1年4.9、2年4.4、3年4.8、4年4.3であった。振り返り及び教員のフィードバックに対し高い評価が得られていることが示され、本結果は平成27年度医学教育学会大会にて発表した。 2. 医学生の共感性スコアの継時的評価と医療面接実技試験の評価:平成27年度入学生の共感性スコアの調査を行うとともに、平成25年度入学生のコミュニケーション実習前後の共感性スコアの調査を行った。コミュニケーション実習を含む地域医療実習を低学年で経験した学生でOSCEにおける医療面接実習のスコアが高いことが示された。本結果は平成27年度医学教育学会大会で発表した。 3. 地域医療教育とキャリア志向性についての評価 平成22年度入学の地域枠学生について研修病院やキャリアパスに関してアンケートを行った。また、平成26-27年度に地域医療実習に参加した123名(3-4年)に対し、地域医療従事とキャリア形成について実習前後に問うたところ実習後にはキャリア形成に関する否定的イメージが有意に低下していた。本結果は平成28年度医学教育学会大会で発表予定である。
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