今年度は、海外からの輸入肝炎の可能性があるHBVジェノタイプAが増加していることから肝炎の輸入モデルについて検討を行った。SEACMコンパートメントモデルを作成し、肝炎キャリア流入による影響を評価した。肝炎キャリア流入率の増加に伴い、急性肝炎患者の増加を認めた。肝炎キャリア流入率が小さい場合、肝炎キャリアがendemicになることは認められなかった。実際には1994年から2010年までのB型急性肝炎のジェノタイプAの割合の変化と、肝炎キャリアの多いアジアからの入国者数との間に有意な正の相関が認められた。(相関係数0.894)。HIV患者報告数との相関は相関係数0.994と高く、本邦のB型急性肝炎の原因の割合はSTDが多いことに一致していた。社会的ハイリスク者については公費でB型肝炎ワクチンを進める等の検討も重要と考えられた。 一方、厚生労働科学研究費による委託研究に関連して、肝炎検査未受診者に対する職域における肝炎検診について検討している。広島県での職域を対象とした肝炎検査ではHBVのキャリア率1.01%との報告もあり、他県で最近実施された職域の肝炎ウイルス検査でも、HCV,HBVキャリアを発見していることから、肝がん予防のため職場の壮年期を対象とした検診は新たなキャリアを発見法として有効と考え啓発を行っているが、同時に若年労働者に肝炎について関心を持ってもらう工夫の検討を継続したい。
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