研究課題/領域番号 |
25460643
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
永光 信一郎 久留米大学, 医学部, 准教授 (30258454)
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研究分担者 |
角間 辰之 久留米大学, バイオ統計センター, 教授 (50341540)
田中 英高 大阪医科大学, 医学部, 准教授 (90188326)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アウトカム / 小児心身症 / 摂食障害 / EAT-26 |
研究実績の概要 |
平成25年度に子どもの心の診療に必要な包括的アウトカム指標として、QTA 30 (Questionnaire for triage and assessmentwith 30 items) の標準化を完了し、子どもの心身症の早期発見、重症度評価、アウトカム評価への使用が開始された。平成26年度は、子どもの心身症の中でとくに入院管理を必要とする摂食障害アウトカム評価の一環として、EAT26 (Eating attitude with 26 items) の標準化を実施した。 本邦における思春期のやせ傾向は、先進国の中でも進んでおり、不健康なやせの比率は成人において12.3%と高率である。思春期のやせは,自身の健康被害の影響の他に,次世代への影響が危惧されている。学校健診における思春期のやせの早期発見システムの確立のため、児童生徒の摂食態度を包括的に評価できる日本語訳Children’s version Eating Attitude Test with 26 items (chEAT-26)の標準化をおこなった。小学校4年生から中学3年生までの児童生徒7,076名に質問紙を実施し、日本語版chEAT-26の妥当性と信頼性を検討した。chEAT-26平均スコアは、7.0(偏差6.8)であった。因子分析では5つの因子に分類(1.痩せへのとらわれ、2.食事や行動による過度な支配、3.摂食制限、4.食べることへの社会的抑圧、5.嘔吐)され、クロンバックα係数は0.80であった。2,151名において再テストが実施され、初回テストとの相関係数は0.76であった。神経性無食欲症44名のデーターとの比較で、カットオフ値18(感度0.69、特異度0.93)が算出された。日本語訳は妥当かつ信頼性があり、学校保健や一般診療で活用され、今後、思春期やせ症の早期発見にも有益であることを検証していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
小児の疾患特異性尺度の開発について、摂食障害アウトカム指標を作成し、患者エントリーを継続している平成25年度終了時が11例のエントリーであるが、現在のエントリー数が84例までに到達した。目標が平成26年度終了時が100例であったため、おおむね順調に進展していると判断している。また、研究仮説の2として掲げた「アウトカム指標と生物学的指標(バイオマーカー)が相関する事を証明する」についても、唾液中のコルチゾール、およびメラトニンの測定を確立させた。現在、アウトカム指標との相関をみるプロトコールを作成中である。
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今後の研究の推進方策 |
アウトカム指標として有用な因子が抽出され、アウトカムスコアが算出可能になった段階で、「小児摂食障害のアウトカムに影響を及ぼす環境・背景因子を解析する。」環境、背景因子として、FIRST VISIT SHEET その他のSHEETから以下の項目を独立変数として取り上げ、従属変数(アウトカムスコア)に影響を及ぼすか検討する。 次に、「小児摂食障害患者のQOLの検討:治療介入による変化について検討する。子どものQOL尺度として、国際的にKid Kindlが汎用されている。Kid Kindlは身体的健康度、情緒的健康度、自尊感情、学校関係、家庭関係、友だち関係の6つの下位項目から構成される。一般に身体疾患(脳腫瘍、気管支喘息、炎症性腸疾患などの慢性疾患を有する児童のおいては、その病勢に一致してQOLは低下するとされるが、摂食障害(神経性無食欲症)児童は、体重をコントロールする事によって快適な生活を一時的に得ているとされるため、病勢に一致して患者本人が自覚するQOLがどの様な状態であるか不明である。また治療介入によってそのQOLがどのように変化するのか知ることは治療構造を理解するうえでも重要と思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
ファイルメーカーでデーター管理をおこなうアウトカム指標作成に関して業者に依頼せずに、研究協力者に依頼して作成したため、その他経費約20万円相当が使用せず、次年度に繰り越された。オープンアクセスの雑誌に論文を投稿しているが、最終採択の返事がまだである。採択された場合に投稿料が20万円ほどかかる予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
オープンアクセスの雑誌に論文を投稿中である。現在、revised 中である。採択された場合に投稿料が20万円ほどかかる予定である。標準化が終了したEAT26の結界を6月にヨーロッパ小児児童精神学会で発表をおこなってくる。その旅費に使用する計画である。
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