研究実績の概要 |
子どもの心の診療の有効性を実証するために心身症のアウトカム評価ツール「子どもの心身のアウトカムスケール:Questionnaire for triage and assessment with 30 items (QTA30) 」を開発した。標準化作業のために、大都市、中都市、地方の小学4年生から高校1年生まで5,778名を対象に、QTA、およびQOL尺度として日本語版KINDLRを実施した。QTA30は心身医学診療で聴取される患児の身体症状、精神症状の主訴、心理社会的背景などに関する質問30項目を「はい」「ときどき」「いいえ」の3尺度で答える自記式を採用した。因子分析で「身体症状 (9項目)」「抑うつ症状 (5項目)」「自己効力感 (8項目)」「不安症状 (6項目)」「家族機能 (2項目)」の5因子を抽出し、クロンバックのα係数は0.74、日本語版KINDLRとの相関係数は0.80、test-retestの相関係数は0.84で、本質問紙の妥当性、信頼性を認めた。小児心身症群70名との比較解析において、「身体症状」の因子に3倍の重み付け配点を行うことでスコアは0点から92点に設定され、カットオフ値 37点(感度76%, 特異度79%)を算出することができた。標準化された自記式アウトカム評価を用いることで、子どもの心の診療の効果や、小児心身症の予後を客観的に表すことができる。また学童期から思春期にかけては、様々な心の問題を呈することが多く、学校保健の視点から心身に不調をきたす児童・生徒の早期スクリーニングにQTA30の活用が期待される。
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