研究実績の概要 |
今年度は平成23年度にF県T町が老人保健健康増進等事業として実施したソーシャルキャピタル(以後SC)に関する調査に協力が得られた12,489名の中で国保または後期高齢者医療制度(以後、後期高齢)の対象かつT町が保有する情報とアンケート調査の連結に同意が得られた4,177名を対象に平成23,24年度の一日当たり医療費の変化を分析した。SCの指標は、日常生活の様々な場面を27項目取り上げ、各場面で必要なときに助けてくれる人がいる場合を1点、それ以外を0点として、合計が9点以下の者を低SC群、10点以上の者を高SC群とした。平成23および24年度診療分の診療報酬明細書(以後レセプト)から医療費総額を求め、資格情報を用いて国保又は後期高齢の対象であった期間を求め、一日当たり医療費の変化を比較した。平成23年度中の国保または後期医療の資格喪失及び解析に用いた項目に欠損値があった177名を除外した4,000名(男1,790名:50.4%、女2,210名:48.7%)が最終的な解析対象となった。全体では低SC群の一日当たり医療費は平成23年度から24年度にかけて576円、高SC群では342円増加しており、低SC群の方が医療費の伸びは高くなっていた。この傾向は男女ともに認められ、性・年齢階級別の検討では男の70歳以上で低SC群と高SC群の一日当たり医療費の伸びの差がより大きくなっていた。 また、主観的社会経済状況などの交絡因子を調整した後もSCは睡眠の質と関連することや、電子化されたレセプトに記載された傷病名を分析する上での障害となり得る未コード化傷病名の分布を2010年5月診療分のK県国保連合会に提出されたレセプトから検討して傷病名全体の約10%が未コード化傷病名であったことと未コード化傷病名の出現パターンはレセプトの種類や傷病大分類によって異なっていたことを明らかにした。
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