研究実績の概要 |
平成23年度にF県T町が老人保健健康増進など事業として実施したソーシャルキャピタル(以後SC)に関する調査に協力が得られた12,489名の内、国民健康保険(国保)被保険者または後期高齢者医療制度(後期高齢)の対象者8,092名からT町が保有する情報とアンケート調査の連結に同意が得られた4,177名を対象に資格情報及び医療費を検討した。平成23年度中の国保または後期高齢の資格喪失(死亡、転出、他保険制度への異動)及び解析に用いた項目に欠損値があった177名を除外した4,000名を分析した結果、平成23年度から24年度の一日あたり医療費は低SC群で576円、高SC群で342円増加していた。この傾向は男女ともに認められ、特に70歳以上の男でより顕著となっていた。 また、主観的社会経済状況などの交絡因子を調整した後もSCは睡眠の質と関連することや、電子化されたレセプトに記載された傷病名を分析する上での障害となり得る未コード化傷病名の分布を平成22年5月診療分のK県国保連合会に提出されたレセプトから検討し、傷病名全体の約10%が未コード化傷病名であったことと、未コード化傷病名の出現パターンはレセプトの種類や傷病大分類によって異なっていたことを明らかにした。 さらに、平成25年4月1日に資格喪失が確認された364人を除いた3,813人について、平成25年度診療分の国保及び後期高齢の費用(医科、歯科、調剤)と介護保険の費用の合計を算出し、合計額が高額な上位10%に該当するリスク要因を分析した。二項ロジスティック回帰モデルにて性、年齢(10歳階級)、ソーシャルキャピタルの多少、主観的健康観(良い、良くない)を検討した結果、年齢と主観的健康観は統計学的有意に総費用の高額な上位10%に該当するリスクと関連していたことを明らかにした。
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