研究課題/領域番号 |
25460648
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
井野 秀一 金沢大学, 医学系, 協力研究員 (20272966)
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研究分担者 |
藤野 陽 金沢大学, 保健学系, 准教授 (40361993)
林 研至 金沢大学, 大学病院, 助教 (00422642)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 肥大型心筋症 / 遺伝子解析 / 不整脈 / 突然死 / 非薬物治療 |
研究実績の概要 |
肥大型心筋症は若年者突然死の原因として最も頻度が高く、また一部は中年以降に収縮不全を呈して心不全を合併する。研究代表者らのこれまでの研究成果に基づき、収縮不全を合併する症例の予測については、遺伝子解析により可能となった。しかしながら致死性不整脈については未だ予測は困難であり、今後は致死性不整脈の予測因子の解明が重要となる。 平成25年度はこれまでに集積した肥大型心筋症400家系について、① 肥大型心筋症の発症に第一義的に関与するサルコメア遺伝子解析を進め、②致死性不整脈検出例に関しては、臨床像を第二義的に修飾するQT延長関連遺伝子を中心とした不整脈関連遺伝子の重点的な解析を進め、致死性不整脈の発症を予測して早期加療に結びつけること、を目的として研究を開始した。本研究に関連して、心臓肥大および肥大型心筋症の患者がどれくらいの頻度で種々の不整脈、心不全、心臓突然死などを引き起こすかという課題を、東京大学、北海道大学、鹿児島大学、高知大学、山口大学、国立循環器病研究センターの研究者と協力して解明した。256名の心臓肥大患者を集積・登録して遺伝子解析と予後調査を行った。256名の患者の過半数は、金沢大学および関連施設の患者である。その結果、サルコメア遺伝子変異により引き起こされた肥大型心筋症患者(G群)では、高血圧による心臓肥大患者(H群)やサルコメア遺伝子変異も高血圧も有さない肥大型心筋症患者(NG群)と比較して,より多くの不整脈や心不全が発生することを確認した。 平成26年度は、遺伝子変異未検出の心筋症19例において、次世代シーケンサーを使用して遺伝子解析を行っている。また、藤田らが肥大型心筋症の線維化と不整脈発症との関連について解析している
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
心臓肥大および肥大型心筋症の患者が種々の不整脈、心不全、心臓突然死などを合併する頻度を、金沢大学を中心とした合計7施設の研究者と協力して調査した。具体的には256名の患者を、(1)サルコメア遺伝子変異を有さず高血圧により引き起こされた心臓肥大患者(H群)、(2)サルコメア遺伝子変異により引き起こされた肥大型心筋症患者(G群)、(3)サルコメア遺伝子変異も高血圧も有さない肥大型心筋症患者(NG群)、の3群に分けて、1年後の時点での各種不整脈の発症や心不全による入院などの発生について解析した。その結果、サルコメア遺伝子変異により引き起こされた肥大型心筋症患者(G群)では、高血圧による心臓肥大患者(H群)やサルコメア遺伝子変異も高血圧も有さない肥大型心筋症患者(NG群)と比較して,より多くの不整脈や心不全が発生することを確認した。これらのデータを平成25年度中にまとめて権威ある欧文誌:J Am Coll Cardiol HFに投稿した所、筆頭論文として掲載された。 平成26年度には、遺伝子変異未検出の心筋症19例において、次世代シーケンサーを使用して遺伝子解析を進めた。既に心筋症の原因遺伝子と確認されている21の遺伝子(ACTC1、MYBPC3、MYH6、MYH7、MYL2、MYL3、TNNC1、TNNT2、TNNI3、TPM1、等のサルコメア遺伝子に加えて、致死性不整脈に関連するRYR2遺伝子を含む)を総括的に検索するターゲットリシーケンスを施行して、解析を行った。心臓肥大や肥大型心筋症の分野での次世代シーケンサーの応用は、本邦では無論のこと、欧米諸国を含めても先進的な試みである。また、肥大型心筋症の線維化と不整脈発症との関連について検討し、藤田らが論文として発表した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度も、肥大型心筋症400 家系について、① 不整脈に強く関与する原因および修飾遺伝子変異・多型を解析すること、② 検出された遺伝子変異を導入した哺乳動物細胞を作製し、確立された手法で細胞電気生理学的検討を行うこと、③ 変異に伴う細胞機能変化を薬理学的手法で正常化する方法を検討すること、により進める。 遺伝子解析の概要は以下のとおりである。白血球よりDNAを抽出し、PCR法にて遺伝子の増幅を行う。その後の手順として、高分解融解曲線分析(Hi-Res Melting: HR-1)と、その多検体(96 検体)版装置:Light Scanner 装置を用いて、所要時間を96 検体当たり30 分程度に短縮して解析を進める。平成26年度の段階で解析は既に軌道に乗り、解析スピードは加速度的に高まった。 また、平成25〜26年度に試行した次世代シーケンスについて、得られた遺伝情報の解析を進めていく。具体的には、遺伝子変異未検出の心筋症19例に関する遺伝情報は、インターネットに接続されていないパーソナルコンピューター上に入手済みである。特に、不整脈発症に関連する心筋リアノジン受容体遺伝子変異を中心として遺伝情報を解析することにより、心筋症と不整脈発症に関与する要因についての結果が得られることが期待される。その上で、遺伝情報と臨床病態との関連をまとめて、国内および海外での発表と論文作成を進める予定である。
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