研究課題
第2世代抗うつ薬(SSRI/SNRI)の治療効果に認められる個人差を規定している薬剤応答性遺伝子を同定するために,平成27年度では,抗酸化酵素発現や炎症性サイトカイン産生に関連する10個の候補遺伝子内の計44個の一塩基多型を症例-対照研究法で解析した。同意したうつ病患者105名を単独治療開始2ヶ月後の治療効果の有無で分けた。3つの治療抵抗性遺伝子を同定した。SSRI治療で,抗酸化酵素発現を抑制しているBACH1のrs1236481でA/G or G/G遺伝子型を持つ患者は約7.7倍,炎症性サイトカイン発現を調整している転写因子NFKB2のrs7897947でT/G or G/G遺伝子型を持つと約8.3倍,また同遺伝子多型でG/G遺伝子型を持つと約5.9倍治療抵抗性を示した。SNRI治療で,腫瘍壊死因子受容体の細胞内シグナル伝達分子であるTRAF2のrs7852970でA/G or G/G遺伝子型を持つ患者は約6.7倍治療抵抗性を示した。現在までにSSRI/SNRI単独治療効果と相関した12個の遺伝子多型について,RegulomeDBとHaploReg v4とJASPAR databaseを用いてin silico解析し,機能している可能性の高い5つの多型を同定した。各多型で個々の対立遺伝子を発現ベクターに組み込み,mRNAの発現量を比較した結果,2つの多型では両対立遺伝子間で発現量に有意差はなかった。現在も,残りの3つの解析を継続している。コホート研究用に新たに同意を得たうつ病患者数が16名と少なく,現時点で統計解析をせず,今後も症例を蓄積して研究を継続することにした。相関した12個の遺伝子多型の多変量解析で有意差のあった多型を組み合わせ,遺伝子診断のバイオマーカーとして有用なものを現在も解析している。近い将来に最終的に最良の組み合わせを同定する。
論文発表後にWebで研究成果を公開する予定である。
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