研究課題
本研究では腎障害時における甲状腺ホルモン、副甲状腺ホルモンの生理的役割に加え、これらホルモンによる生理調節機能に基づいた新規腎疾患治療法の開発を最終目標とした。平成26年度は、尿毒症物質の一つとして知られている副甲状腺ホルモン(PTH)に着目し、PTHによる各種トランスポーターや代謝酵素の機能調節についてついて検討を加えて以下の知見を得た。1.腎障害モデルラットを用いたin vivoの検討から、PTHの上昇に伴い、肝臓及び小腸のP-糖タンパク質(P-gp)と3A2発現の低下が観察された。予備的検討よりその他のトランスポーターについても発現変動が確認されているが、今後、再現性を含めて確認予定である。2.HepG2細胞、Caco-2細胞を用いた検討から上記の変動にはPTHRが関与していることが明らかとなった。特にP-gpと3A4発現変動にはmRNAレベルからの変化が確認されたことから、転写レベルでの発現調節が関与していた。以上の結果から、PTHは低分子化合物の排泄に関わるタンパク質の機能低下をもたらすことが明らかとなった。すなわち、PTHが惹起する生理機能を標的とした腎疾患治療戦略に向けた重要な知見が得られた。
2: おおむね順調に進展している
副甲状腺ホルモンレベルが各種トランスポータ群とCYP発現に及ぼす影響について、In vivo及びin vitroの両面から確認することができた。今後、調節機構の解明が必要であるが、少なくともPTHRの関与を示唆するデータを得ることに成功している。今後は主に細胞系を用いて、機能調節機構についての詳細を明らかにしていく。以上のことから、本研究課題は概ね順調に進展していると思われる。
今後は主に細胞系を用いて、機能調節機構についての詳細を明らかにしていく。加えて、PTH低下薬の効果をin vivoで解析することでこれまでの結果の検証と治療戦略のための基盤となるデータを取得する。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)
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http://www.pharm.kumamoto-u.ac.jp/Labs/Yakuzai/