研究課題/領域番号 |
25460654
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岐阜薬科大学 |
研究代表者 |
足立 哲夫 岐阜薬科大学, 薬学部, 教授 (40137063)
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研究分担者 |
原 宏和 岐阜薬科大学, 薬学部, 准教授 (30305495)
神谷 哲朗 岐阜薬科大学, 薬学部, 助教 (60453057)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | エピジェネティクス / インクレチン / 血管内皮細胞 / シグナル伝達 / ストレス / 糖尿病 |
研究概要 |
1.Advanced glycation end-products(AGE)の中でも細胞傷害性が強いグリセルアルデヒド由来のglycer-AGEを調製し、血管系主要細胞である平滑筋細胞(SMC)に対する傷害性を検討した結果、48、72時間という比較的長時間の負荷により細胞傷害が観察された。また、細胞傷害が細胞内活性酸素(ROS)の産生、NADPH oxidase-4(NOX4)の発現亢進、アポトーシス抑制因子Bcl2の発現低下、p38MAP kinase(p38MAPK)のリン酸化を伴い、抗酸化剤NACやp38MAPK阻害剤SB203580により抑制された結果より、glycer-AGEによるSMC細胞傷害には酸化ストレスやp38MAPKの活性化が関与することが示唆された。 2.AGEのヒト網膜血管内皮細胞(HREC)への影響を解明するため、その受容体であるAGE受容体(RAGE)を高発現する細胞の樹立を目指した。RAGE発現ベクターを作製しRAGE遺伝子をHRECに導入した結果、一過性のRAGE高発現は観察されたが、定常的に高発現する細胞株を樹立することはできなかった。 3.GLP-1アナログ(exendin-4)の血管系への直接的作用として、HRECにおけるタイトジャンクション蛋白(TJP)発現に対するexendin-4の影響を明らかにする実験に先立って、血管系特異的抗酸化酵素であるextracellular-superoxide dismutase(EC-SOD)発現に対するexendin-4の影響をGLP-1受容体を高発現しているA549細胞を用いて検討した。その結果、exendin-4はEC-SODプロモーター領域の脱メチル化を介してEC-SOD発現を高度に亢進していることが判明した。 4.HRECでの小胞体ストレスに起因するTJP発現低下に対し、臨床の場で使用されているステロイド剤であるトリアムシノロン(TA)がステロイド受容体依存的に保護することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
RAGE高発現のHRECの樹立ができなかったため、glycer-AGEを調製し、RAGEの発現が認められているSMC細胞を用いて、AGE細胞傷害のメカニズムを解明した。また、GLP-1アナログであるexendin-4をHRECに負荷した場合にclaudin-5の発現の変化が認められなかった。このように計画通りに研究が進行しなかったため、GLP-1アナログによるエピジェネティクス制御に関しては、本研究室にて、その発現がエピジェネティクス制御を受けていることを報告している抗酸化酵素EC-SODにターゲットを変更し、GLP-1受容体を高発現しているA549細胞を用いて検討した。その結果、GLP-1アナログexendin-4がEC-SOD発現を有意に亢進すること、その機序として脱メチル化を介することを示唆する結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
1.A549細胞でのEC-SOD発現をGLP-1アナログexendin-4が脱メチル化を介して有意に亢進することが明らかになったため、そのメカニズムについてMSP法やbisulfite sequence法を用いて詳細に検討する。また、本反応がexendin-4のGLP-1受容体への結合により開始されることを確認するために、GLP-1受容体アンタゴニストであるexendin-(9-39)の同時添加の影響を検討する。さらに、DNA脱メチル化を触媒するDNA methyltransferase(Dnmt)の発現量の変化や活性の変化を解析することで、脱メチル化のメカニズムを明らかにする。 2.A549細胞におけるEC-SOD発現に対するexendin-4のエピジェネティクス制御機構として、EC-SOD遺伝子の脱メチル化以外にヒストン修飾の可能性について検討する。これが確認された場合、平成27年度は、ヒストン修飾メカニズムについて詳細に検討する。 3.臨床研究として、GLP-1アナログあるいはDPP-4阻害剤による治療を開始した糖尿病患者の投与開始前後の血清中EC-SOD濃度を測定し、培養細胞を用いたin vitro実験結果との関連性を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度、RAGE高発現のHRECの樹立ができなかったこと、exendin-4をHRECに負荷した場合でもclaudin-5の発現の変化が認められなかったことなど、当初の計画通りに研究が進行しなかったため、exendin-4によるTJP発現に対するエピジェネティクス制御のメカニズムの検討開始に至らなかった。 平成25年度に明らかになったexendin-4によるEC-SODプロモーター領域の脱メチル化を介したEC-SOD発現亢進のメカニズムについて、MSP法やbisulfite sequence法にて解析し、さらにDNA methyltransferase(Dnmt)の関与についても検討するため、それに必要な試薬を購入する。
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