研究課題/領域番号 |
25460654
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研究機関 | 岐阜薬科大学 |
研究代表者 |
足立 哲夫 岐阜薬科大学, 薬学部, 教授 (40137063)
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研究分担者 |
原 宏和 岐阜薬科大学, 薬学部, 准教授 (30305495)
神谷 哲朗 岐阜薬科大学, 薬学部, 助教 (60453057)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | インクレチン / エピジェネティクス / ストレス / 糖尿病 / 抗酸化酵素 |
研究実績の概要 |
1.正常肺上皮細胞においては抗酸化酵素extracellular-superoxide dismutase(EC-SOD)の発現が高いにも関わらず肺胞基底上皮がん細胞であるA549細胞における発現は非常に低い。平成25年度、A549細胞でのEC-SOD発現をGLP-1アナログであるexendin-4が有意に亢進することを明らかにした。平成26年度はこのメカニズムついて詳細に検討した結果、EC-SOD遺伝子の脱メチル化というエピジェネティクス制御によることが判明した。EC-SODプロモーター領域は高度にメチル化され転写抑制されている。Exendin-4負荷後の変化をメチル化感受性制限酵素を用いたPCR法、methylation specific PCR法(MSP法)、bisulfite-sequence法にて解析した結果、EC-SODプロモーター領域のうち-149と-93 CpGサイトの脱メチル化が誘導されていることが判明した。また、このexendin-4の作用は、GLP-1受容体アンタゴニストであるexendin-(9-39)の添加により有意に抑制された結果から、GLP-1受容体への結合によることが明らかになった。さらに、exendin-4はDNA methyltransferase(DNMT)の発現量には影響を及ぼさないものの、その活性を阻害することで脱メチル化を誘導することが判明した。 2.臨床研究として、GLP-1アナログあるいはDPP-4阻害剤による治療を開始した糖尿病患者の投与開始前後の血清中EC-SOD濃度を測定しin vitro実験結果との関連性を明らかにするために、関係医療機関ならびに本学の倫理委員会の承認を得て、血清サンプルの収集を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度、advanced glycation end-products 受容体(RAGE)高発現のヒト網膜血管内皮細胞(HREC)の樹立ができなかったため、GLP-1アナログであるexendin-4のエピジェネティクス制御についてのターゲット分子を抗酸化酵素EC-SODに変更し、GLP-1受容体を高発現しているA549細胞を用いて検討することにした。その結果、上記のようにexendin-4がEC-SODプロモーター領域の脱メチル化を介してEC-SOD発現を有意に亢進することとその詳細なメカニズムについて明らかにすることができた。平成27年度は、この知見をもとに、HRECでのEC-SOD発現に対するexendin-4の作用を明らかにするとともに、その詳細なメカニズムを明らかにする。
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今後の研究の推進方策 |
1.A549細胞でのEC-SOD発現のエピジェネティクス制御についてヒストン修飾の関与についても検討し、これが確認された場合はヒストン修飾メカニズムを解明する。 2.ヒト網膜血管内皮細胞(HREC)におけるEC-SOD発現のエピジェネティクス制御について、DNAメチル化とヒストン修飾の可能性を明らかにし、これが確認された場合はその詳細なメカニズムを解明する。 3.臨床研究として、GLP-1アナログあるいはDPP-4阻害剤による治療を開始した糖尿病患者の投与開始前後の血清の収集を継続し、その血清中EC-SOD濃度を測定し、in vitro実験結果との関連性を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成25年度に当初の計画通りに研究が進行しなかったため、exendin-4によるエピジェネティクス制御のメカニズムの検討開始に至らなかった。平成26年度は抗酸化酵素EC-SODにターゲットを変更し、GLP-1受容体を高発現しているA549細胞を用いてexendin-4によるエピジェネティクス制御機構を解明することができ、ある程度遅れを取り戻すことができたが、当初予定した網膜血管内皮細胞でのexendin-4によるエピジェネティクス制御の解明までは至らなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度に明らかになった知見を活かし、当初目的の網膜血管内皮細胞でのexendin-4によるエピジェネティクス制御機構を明らかにするために必要な試薬類を購入する。
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