研究課題/領域番号 |
25460655
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
伊藤 猛雄 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70159888)
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研究分担者 |
梶栗 潤子 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (10444986)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 内皮依存性膜過分極因子 / 静脈グラフト / 血管内皮機能障害 / 内膜肥厚 / アセチルコリン / 一酸化窒素 / Ca活性化K+チャネル |
研究実績の概要 |
ウサギ異常血流下の静脈グラフト血管の平滑筋細胞における内皮依存性膜電位変化と内皮細胞膜過分極因子(EDHF)の役割に関する検討を行った。 実験は日本白色ウサギを用いて行い、異常血流グラフトモデルは右外頚静脈を右総頚動脈に移植後、その末梢の動脈の3分枝を結紮することにより作成した(poor runoffモデル)。移植28日後にグラフト血管を摘出し、実験に供した。対照は、正常ウサギの非グラフト外頚静脈とした。 正常外頚静脈において、アセチルコリン(3 μM)やカルシウムイオノフォアA23187 (1 μM)は、平滑筋細胞を過分極させた。この過分極は内皮除去により消失し、また、Ca2+-activated K+ channel inhibitorであるapamin+charybdotoxinで抑制された。異常血流グラフト血管において、アセチルコリンは内皮の存在にかかわらず平滑筋細胞と内皮細胞の膜電位に影響を与えなかった。一方、A23187 (1 μM)は持続性に平滑筋細胞を脱分極させた。また、A23187 (1 μM)は内皮細胞に対して、一過性に膜を過分極させるとともに、それに引き続く脱分極を発生させた。A23187による平滑筋細胞と内皮細胞の膜脱分極はCa2+-activated Cl- channel inhibitorである niflumic acidにより抑制された。このことより、平滑筋細胞と内皮細胞の間の電気的カップリングは静脈グラフト血管では消失している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、自家静脈グラフト血管における内膜肥厚と内皮由来膜過分極因子(EDHF)の機能変化との関連を検討し、EDHFの機能改善を標的とした血管内膜肥厚抑制のための新たなる治療戦略の探索を目的としたものである。 これまでの研究で、内皮を温存した正常ウサギ外頸静脈では、1.AChは内皮依存性の過分極を発生するのに対し、静脈グラフト血管においては、AChは平滑筋細胞の膜電位を変化させず、EDHの機能障害が発生していること、また、2.静脈グラフトにおいて、A23187により内皮細胞では一過性の膜過分極と持続性の脱分極を発生するが、平滑筋細胞では持続性の脱分極のみ発生することが明らかとなった。このことより、自家静脈グラフト血管では、内皮細胞と平滑筋細胞の電気的カップリングが障害されているものと考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、静脈グラフト内皮細胞の膜電位に対するCa2+活性化K+-channelアゴニスト(IKCaとSKCaのアゴニスト)である1-EBIOの作用を検討するとともに、KCa channelの発現に関する生化学的および組織学的検討を行うことにより、静脈グラフトのEDH機能障害の機序を明らかにする。また、内膜肥厚を抑制する効果のある薬物とEDH機能改善効果との関係についても検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
抗体等の試薬を発注したが国内在庫がなく海外取り寄せとなり納品が遅れた。そのため26年度の研究費に未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の試薬については今年度に納入されるため、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め当初予定通りの計画を進めていく。
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