研究課題/領域番号 |
25460655
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
伊藤 猛雄 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70159888)
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研究分担者 |
梶栗 潤子 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (10444986)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 内皮依存性膜過分極因子 / 静脈グラフト / 血管内皮機能障害 / 内膜肥厚 / アセチルコリン / 一酸化窒素 / Ca活性化K+チャネル |
研究実績の概要 |
自家静脈グラフト血管における内膜肥厚と内皮由来膜過分極因子(EDHF)の機能変化に対するDPP4阻害薬慢性投与の効果を検討した。 静脈グラフト血管では、内皮由来NOおよびEDHFの両機能の障害が発生しており、アセチルコリンによる内皮依存性弛緩反応が消失していた。後者の機能障害より、静脈グラフトでは平滑筋細胞と内皮細胞間の電気的カップリングが消失していると考えられた。 DPP-4阻害薬は血糖低下作用だけでなく、GLP-1依存性および非依存性の抗動脈硬化作用を有することが報告されている。しかしながら、DPP-4阻害薬の静脈グラフトの内膜肥厚抑制効果は不明である。我々は、DPP-4阻害薬ビルダグリプチンをグラフト移植1週間前から、グラフト採取(術後28日目)まで慢性飲水投与し、その静脈グラフト内膜肥厚抑制効果を検討した。 ビルダグリプチン投与は、血漿中のGLP-1濃度を増加させたが、血糖値には影響を与えなかった。ビルダグリプチン投与は、グラフト血管の管腔を拡大させ、内膜肥厚を抑制した。 コントロール(ビルダグリプチン非投与)群の静脈グラフト血管において、アセチルコリンは血管を弛緩させなかった。一方、ビルダグリプチン投与群の静脈グラフト血管において、アセチルコリンは内皮由来NO依存性弛緩反応を発現させた。ビルダグリプチン投与群の静脈グラフト血管において、アセチルコリンは内皮細胞の細胞内カルシウム濃度や平滑筋細胞の膜電位に影響を与えなかった。このことより、DPP4阻害薬は静脈グラフト血管でのアセチルコリンによるEDHFの機能を改善できないことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、自家静脈グラフト血管における内膜肥厚と内皮由来膜過分極因子(EDHF)の機能変化との関連を検討し、EDHFの機能改善を標的とした血管内膜肥厚抑制のための新たなる治療戦略の探索を目的としたものである。DPP4阻害薬慢性投与は、アゴニストによるNOの遊離・放出機能は改善するが、EDHのF機能障害に効果がないことを明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、動脈グラフト血管における内膜肥厚とEDH機能変化について検討し、前年までの静脈グラフトでの結果と比較検討することにより、静脈グラフトにおけるEDH機能障害のメカニズムを明らかにし、血管内膜肥厚抑制の治療戦略の可能性について検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
27年度は、静脈グラフト血管における内皮由来膜過分極因子EDHFの機能異常の原因を明らかにする為、平滑筋細胞の膜電位に対する KCaチャネル阻害薬の効果や内皮細胞内カルシウム濃度変化について検討した。しかしながら、静脈グラフトにおける内膜肥厚とEDHFの機能障害との関係をさらに明らかにする為、新たに動脈グラフト血管を用いた検討を行うこととし、次年度まで計画を延長した。
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次年度使用額の使用計画 |
実験の追加と論文作成を次年度に延長して行うために、未使用額をその経費に充てる予定である。
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