研究課題
外科手術によって発生する自家動脈グラフト血管における内膜肥厚と内皮由来一酸化窒素(EDNO)および内皮由来膜過分極因子(EDHF)の機能変化について、ウサギ動物モデルを作成し検討した。動脈グラフト血管では、コントロール血管(正常総頸動脈血管)と比較し、アセチルコリン(ACh)による内皮依存性弛緩反応が有意に増大し、血管吻合術によって発生する内膜肥厚は僅かであった。動脈グラフト血管におけるサイクロオキシゲナーゼ阻害薬ジクロフェナック存在下でのAChによる内皮依存性弛緩反応では、EDNO依存性弛緩反応が増加し、逆に、EDHF依存性弛緩反応は減少した。後者の反応変化の詳細は、①動脈グラフト血管内皮細胞でのAChによる内皮細胞[Ca2+]i上昇が減少するとともに、②平滑筋細胞の内皮依存性過分極が減少した。一方、コントロール血管と比較して、③Ca2+イオノフォアであるA23187による内皮細胞[Ca2+]i上昇と平滑筋細胞の内皮依存性過分極に有意な変化は認められなかった。以上の結果より、動脈グラフト血管でのEDHFの機能障害は、アゴニストによる内皮細胞の[Ca2+]i増加機序の障害に起因した内皮細胞-平滑筋細胞間の電気的カップリング機序の異常によるものと考えられた。このことより、動脈グラフト血管では、内皮細胞での[Ca2+]i-非依存性NO生成の増加によりEDHFの機能障害をカバーするとともに、自家動脈グラフトの内膜肥厚を最小化している可能性が示唆された。
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Circulation Journal
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10.1253/circj.CJ-17-0034