研究課題
基盤研究(C)
ロイコトリエンC4、D4、E4は、アラキドン酸から5-リポキシゲナーゼ経路により作られる強力な炎症性脂質メディエーターである。炎症性病変部位で産生されるロイコトリエンC4を定量するために抗ロイコトリエンC4モノクローナル抗体が樹立され、これを利用した酵素免疫測定法が開発されている。このモノクローナル抗体は、ロイコトリエンC4と高い親和性で結合するが、ロイコトリエンC4のグルタチオン部分からグルタミン酸とグリシンが順次外れて作られるロイコトリエンD4とE4とも部分的に結合する。このモノクローナル抗体によるロイコトリエンC4の特異的認識機構を明らかにすることを目的として、申請者はこれまで、抗ロイコトリエンC4モノクローナル抗体のH鎖とL鎖の可変領域を15個のアミノ酸よりなるリンカー配列を介して連結した単鎖抗体の大腸菌での発現に成功していた。今年度は、抗ロイコトリエンC4モノクローナル抗体と抗原との結合に関与するアミノ酸を同定するため、X線結晶解析においてロイコトリエンC4のグルタチオン部分との水素結合が示された抗体のL鎖の可変領域上のいくつかのアミノ酸の変異体を作成した。これらの変異型の中に、ロイコトリエンE4への親和性が野生型単鎖抗体と比較して上昇したものがあった。大腸菌での発現は発現量が少ないこと、また元のモノクローナル抗体と比較してロイコトリエンC4との結合親和性が大きく低下するという問題があったため、メタノール資化酵母を用いた単鎖抗体の発現を試みた。酵母菌で発現した単鎖抗体の結合親和性は、大腸菌で発現した抗体と比較して発現量が増加しただけでなく、ロイコトリエンC4との結合親和性も上昇した。ロイコトリエンE4への親和性が野生型単鎖抗体と比較して上昇した変異体について酵母菌で発現して調べたところ、大腸菌での発現と同様の結果が得られた。
2: おおむね順調に進展している
25年度に実施予定としていた研究計画(1.抗ロイコトリエンC4 単鎖抗体の発現 2.抗ロイコトリエンC4 単鎖抗体の部位特異的変異体の作成 3.各種ロイコトリエンとの結合性の変化する単鎖抗体変異体の探索)は概ね当初の計画通り実施し、期待された成果が得られたため。
当初大腸菌で発現予定であった単鎖抗体は、発現量が少なかったため、酵母での発現に切り替え、親和性も発現量も上昇した。本年度は26年度以降に実施が計画されていた通り、変異体のさらなる作成と解析を進めるとともに、ロイコトリエン受容体サブタイプによるリガンド認識機構の解明に向け、変異型受容体を作成してリガンド結合に関わるアミノ酸の同定を進める。
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