研究課題
基盤研究(C)
気道上皮細胞は、非神経性コリンの主要な産生細胞であり、炎症を制御する機能を果たす可能性がある。喘息では線毛気道上皮細胞が粘液分泌細胞や線維芽細胞に変化(形質転換)することにより、肺の構造的変化(気道リモデリング)が惹起され難治化する。本研究は、線毛上皮細胞、粘液分泌細胞および線維芽細胞を標的として、アレルゲンに対する反応、自然免疫の賦活化および非神経性コリン産生細胞としての反応の差異を解明し、難治性呼吸器疾患の肺の構造の変化(肺のリモデリング)修復を目指すことを目的とした。非神経性コリン産生細胞として、線毛上皮細胞は働くが、粘液分泌細胞はその機能を消失することを示した。非神経性コリン物質として注目し、気道上皮細胞が分泌するSLURP-1の働きの解明を試みた。SLURP1はα7 nAChRを介して働くが、α7 nAChRを介する刺激により気道上皮細胞は線毛運動が活性化すること、サイトカイン産生が抑制されることを明らかにした。また、iSRNAを用いた検討で、ヒトの細胞でも同様の機能を有していることを明らかにした。SLURP-1が気道上皮細胞を介して、気道の恒常性維持に有用あることが明らかとなった(Narumoto O et al. Biochem Biophys Res Commun 438:175-179,2013)気道上皮細胞のダニアレルゲンを介する自然免疫賦活化について検討した。ダニアレルゲンは、マウスのTLR強制発現株を用いた検討で、TLR4を介してNF-kBを誘導するとともにTLR1+TLR2、TLR2+TLR6を介してもNF-kBを誘導することが明らかになった(Kitajima-T et al, Biol. Pharm Bull 37;74-80, 2014)。TLR1+TLR2をPAM3で、 TLR2+TLR6刺激をMALP2で行うと、ヒト培養気道上皮細胞においても活性化が誘導され、濃度依存的にIL-6を分泌した。
2: おおむね順調に進展している
気道上皮細胞のダニアレルゲンを介する活性化について順調に明らかに出来ている。しかし、リコンビナントアレルゲンDerf1、Derf2を使用しての検討については、反応性が認められず、軌道修正を行っている。TLR4を介する刺激にはMD2の存在が必須であるが、TLR2を介してMD2を介さない刺激が気道上皮細胞に入ることを明らかにできた。そこで、現在MD2ノックアウトマウスを用いての検討で、ダニアレルゲン刺激におけるMD2の役割を明らかにすることへ検討を進めている。また、ダニアレルゲンを介する刺激伝達経路としてIRF3を介する経路についても検討を進める準備を開始した。
気道上皮細胞の障害および修復過程を明らかにする目的で、動物モデルを用いた検討を進める。MD2ノックアウトマウスおよびIRF3ノックアウトマウスについて、実験の準備を整えた。IRF3はTLR4を介した刺激の細胞内伝達経路の中で、NFkBと2分する経路である。
当該年度の研究費を十分使用したが、試薬購入には端数の額が残金として残り、次年度に試薬をまとめて購入とした。平成26年度末に新規のリアルタイムPCR機器が大学の共通機器として装備されることが決定されたため、その機器用の消耗品購入にあてる。
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Biol. Pharm Bull
巻: 37 ページ: 74-80
Biochem Biophys Res Commun
巻: 438 ページ: 175-179
10.1016/j.bbrc.2013.07.048.