研究課題
近年、高尿酸血症が心血管イベントや腎障害の一因である可能性が示唆されている。本研究では、1)高尿酸血症モデルラットの血管機能、腎機能を評価することで高尿酸血症が心血管系、腎組織へ及ぼす影響を検討する、2)L/N型カルシウム拮抗薬シルニジピンによる治療効果を検討する、ことを目的とした。高尿酸血症モデルの作成法はこれまでの報告に基づき、ウリカーゼ阻害薬であるオキソン酸カリウム(750mg/kg/day、p.o.)を6週間投与したが、有意な尿酸値の上昇は認められなかった。そこで投与量を2倍(750mg/kg、twice a day、p.o.)にし、両腎、片腎ラットにそれぞれ投与したところ、片腎ラットにオキソン酸カリウム(1500mg/kg/day)を投与した群でのみ有意な尿酸値の上昇が認められた。高尿酸状態をより長期間継続させるため、投与期間を8週間とした。尿酸値はvehicle群(2.02±0.11mg/dL)に比べ有意に増加し(2.73±0.11mg/dL、p<0.05)、シルニジピン(1mg/kg/day、p.o.)の投与によりコントロールレベルに低下した(2.11±0.12mg/dL)。テールカフ法にて測定した収縮期血圧、心拍数は全群間に有意差を認めなかった。一方、尿中蛋白排泄量はvehicle群(6.73±0.49mg/day)とシルニジピン群(7.38±0.51mg/day)に比べ、高尿酸血症群で有意に高い結果となった(10.51±1.20mg/day、p<0.05)。また胸部大動脈リング標本を用いて内皮機能を検討したところ、高尿酸血症群で内皮機能の低下を認めたが、シルニジピン投与により有意に改善された。これらの結果から、高尿酸血症は腎、血管機能低下の危険因子であること、またシルニジピンは尿酸値の低下と尿蛋白、血管内皮機能低下を改善することが明らかとなった。
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Pharmacology
巻: 97 ページ: 265-276