今年度は筋ジストロフィーおよび内視鏡治療後の食道粘膜狭窄の増悪過程において共通する病態と考えられているマクロファージが関与する炎症反応に焦点を当てて研究を展開した。ヒトリンパ球系の細胞株であるTHP-1をphorbol 12-myristate 13-acetate(PMA)で48 時間分化誘導をかけてマクロファージ様に分化させた細胞にpoly(I:C)やCSEなどの各種刺激を加えた後に誘導されるサイトカインやケモカインの生成/分泌量をELISA 法にて蛋白レベルで評価した。その結果、インターロイキン(以下、IL)-8の誘導が顕著であった。そこでIL-8を指標として、従来から抗炎症薬として用いられているシクロオキシゲナーゼ阻害薬やステロイドとは異なる機序で炎症抑制効果が期待できる各種薬物についてIL-8の抑制効果を検討したところ、抗線維化薬のピルフェニドンおよびホスホジエステラーゼ(以下PDE)4阻害薬のロフルミラストにおいて、IL-8の抑制傾向が認められた。 この系はCSE処理において炎症性サイトカインの1つであるIL-8を著明に増加させる簡便な系であることが確認された。さらにIL-8を指標として用いることで、炎症性サイトカインの分泌抑制ひいてはCOPD等慢性炎症が関与する疾患の対する候補薬物のスクリーニングに有用であることが示唆された。今後は引き続き、これまでの実験では測定が困難であったコラーゲンタンパクに対する評価方法の確立を続け、上記薬物によりIL-8のみならず最終的な治療標的であるコラーゲンタンパクの生成抑制効果が認められるかどうかの解析を行う予定である。
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