研究課題
1. フォトメカニカル波(PMW)を用いた血液脳関門(BBB)開通技術の確立: ラット悪性脳腫瘍(グリオーマ)モデルを対象に,PMWによる模擬薬剤(エバンスブルー,EB)の送達実験を行った。薬剤を腫瘍中心部および浸潤がみられる腫瘍周縁部に高効率かつ安全に送達するためのレーザー照射条件を明らかにするとともに,BBBを開放するために必要な圧力値について評価した。さらに,緑色蛍光タンパクを発現するグリオーマ細胞を用いたモデルを対象に,PMWの適用により,治療の重要な標的となる腫瘍周縁部のグリオーマ細胞へのEB分子の送達効率が有意に高まることを示した。2. 光音響断層イメージング(PAT)法による脳組織内薬剤動態評価技術の確立: 上記薬剤送達の評価に応用するため,音響学的空間分解能を有するPAT装置を開発し,PMWの適用によりラット脳血管から漏出する薬剤(EB)分布の画像化を試みた。血液およびEB分子それぞれの吸収係数が高い二波長の励起光(532 nm, 670 nm)を用いることにより,血管と薬剤の分布を同時に画像化可能であることを示した。しかし画像化深度は血管について約2 mm,薬剤について約1 mmに制限され,改善が必要であることがわかった。3. 臨床応用のための要素技術開発: 1項記載の薬剤送達技術を臨床応用する際に必要となる,深部組織標的化技術および経光ファイバー的適用技術について検討を行った。深部組織標的化技術に関しては,市販光学レンズの凹面を用い,ごく安価にPMWを反射・集束させる方式により,標的深度15 mmにPMWを集束できることを確認した。経光ファイバー的適用技術に関しては,外径を従来(2.7 mm)の約半分である1. 4 mmまで細径化した光ファイバーにより,BBBの開放に必要なPMW圧力を発生させうることを確認した。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)
Japanese Journal of Applied Physics
巻: 54 ページ: 116601/1-6
10.7567/JJAP.54.116601