研究課題/領域番号 |
25460666
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
齊藤 崇 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所遺伝子疾患治療研究部, 研究員 (40625969)
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研究分担者 |
永田 哲也 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所遺伝子疾患治療研究部, 室長 (50362976)
武田 伸一 独立行政法人国立精神・神経医療研究センター, トランスレーショナル・メディカルセンター, センター長 (90171644)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 応用薬理学 / 遺伝子診断・治療 |
研究概要 |
ジストロフィン遺伝子(DMD遺伝子)の変異によりジストロフィンが欠損するデュシェンヌ型筋ジストロフィー患者の約10%は同遺伝子の重複変異により発症している。アンチセンス・オリゴヌクレオチド(AON)を用いて、同遺伝子のフレームシフト変異をインフレームに修正するエクソン・スキップの治療研究が進んでいるが、今のところ対象の多くはエクソン欠失変異であり、重複変異への適用可能性は十分に検討されていない。本研究は重複変異DMD遺伝子のエクソン・スキップによるジストロフィン発現ついて検討し、新規治療法の開発を目指すものである。研究期間初年度は、ゲノム上のエクソン再配置の影響を予測するためのアレイCGH等による解析、並びに標的エクソンに対するAON配列の設計及び有効配列のスクリーニングに主に取り組んだ。まず、DMD遺伝子全領域をカバーするアレイCGHの有用性を検討するために、MLPA法によりあらかじめエクソン8-9の重複変異が同定されたサンプルを用いて検証したところ、同アレイによりゲノム上の重複領域の長さと断端位置が容易に推測可能であった。また当面の標的としているDMD遺伝子エクソン6-9のスキップを誘導するAON配列について設計とスクリーニングを行い、患者細胞に適用する最適な組み合わせを探索した。次年度以降はこれらのAONを患者細胞に適用し、エクソン・スキップとジストロフィン発現を実際に評価する予定としている。以上のように、本年度はエクソン・スキップ適用の前提となる詳細な変異形式の解析と、有効な活性を持つAONの探索について取り組み、次年度以降の展開に向けた基礎的な成果を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は患者細胞を用いたエクソン・スキップとジストロフィン発現の解析には至らなかったが、前提となる重複変異の解析及び有効AON配列のスクリーニングに取り組み、次の段階につながる成果を得ることができた。特にアレイCGHを用いたエクソン8,9 重複変異の断端解析からは、本来のイントロン9に続いて重複したイントロン7が接続し、断端部はイントロン7及び9からなる110 kbの欠失を伴って接合部を構成していた。この成果は重複領域の断端解析におけるアレイCGHの有用性を示すとともに、DMD遺伝子におけるエクソン重複変異の発生機構を推測する上で役立つと考えられる。また有効なAON配列のスクリーニングに関しては、個別エクソンに対して有効なAON配列候補をほぼ特定するに至った。個別エクソンについてスキップ可能な配列を特定することは、重複領域エクソンのマルチスキップという目標達成に向けてまず必要とされる条件であることから、この点からもほぼ順調な進捗状況にあると考えられる。以上より平成25年度までの達成度については、概ね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度以降はDMD患者由来の重複変異細胞に対し、スクリーニングで有効性が確認されたAON配列を用いて、エクソン・スキップ、フレームシフトの修正、及びジストロフィンの発現回復に関する解析を進めていく。またこの過程においては、これまで検討したアレイCGH等を用いた変異解析手法を適用し、エクソン・スキップの有効性に変異形式がもたらす影響についての解析を試みる。
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