研究課題
プラズマローゲンはコリン型とエタノールアミン型を有し、哺乳類の心臓や骨格筋ではコリン型の比が高く、その脳ではエタノールアミン型の比が高いことが知られている。 ヒト血漿中のプラズマローゲン濃度は約0.1-0.3 mMで、その約40%がコリン型、約60%がエタノールアミン型である。血漿中においては、プラズマローゲンコリン型がコリングリセロリン脂質の約5%、エタノールアミン型がエタノールアミングリセロリン脂質の約60%を占めている。今まで、本研究室では、コリン型プラズマローゲンを化学合成してきたが血中に多く存在しているエタノールアミンプラズマローゲンの合成を行われなかった。H26年度は主にヒト血中コリン型プラズマローゲンの定量およびエタノールアミン型プラズマローゲンの合成法に関して検討した。具体的に、奇数の脂肪酸を含むコリン型プラズマローゲンを作成し、それを用いて液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC/MS)によるコリン型プラズマローゲンの定量法を検討した。また、エタノールアミン型プラズマローゲンの合成を試みた。さらに、コリン型プラズマローゲン分子がメタボリックシンドロームに関連するパラメーターであるHDL-cholesterol, small dense LDL と強い相関を持つことを明らかにした(J Lipid Res. 55: 956-965, 2014)。なお、グリセロール骨格の2位にオレイン酸を含有するコリン型プラズマローゲンと心血管疾患との関連性についても検討した(Clinica Chimica Acta. 437: 147-154, 2014)。
3: やや遅れている
やや遅れている原因はプラズマローゲンの化学的不安定な性質にある。プラズマローゲンのsn-1位に反応性の高いビニールエーテルが含まれており、化学合成の過程で他の物質と反応したり、壊れたりして予想以上に合成回収率が悪かった。そのために、コリン型プラズマローゲンを定量する際に必要な内部標準物質の作成に時間を費やした。なお、化学合成により得られたコリン型標準物質と内部標準物質が不安定のため、他の物質に分解されることにより定量分析法の開発に時間を要した。
今後は、グリセロールの骨格sn-1位に含まれているビニルエーテルを適切な保護基と反応させ、ビニルエーテルを保護する上、次の反応を順次行う。なお、グリセロール骨格sn-2位に多価不飽和脂肪酸を導入してから、ビニルエーテルの保護基を外す。最終的に目的物質が効率よく手に入れられると考えている。なお、化学合成で得られたプラズマローゲンが入ったチューブに窒素ガスを充填し、-80度に保存する。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
Clin Chim Acta
巻: 437 ページ: 147-54
10.1016/j.cca.2014.07.024.
J Lipid Res
巻: 55 ページ: 956-65
10.1194/jlr.P045591.