研究課題
難治性喘息、Churg-Strauss症候群(好酸球性多発血管炎性肉芽腫症)、好酸球性肺炎、好酸球増多症候群、好酸球性食道炎、好酸球性中耳炎・副鼻腔炎といった疾患は、強力なステロイド治療を行ってもしばしばその制御が難しい。これらの疾患における治療ターゲットである好酸球は、血流から局所に集積・活性化しその運命(生死)を決定している。我々は一連の研究において、炎症組織で認められる好酸球の脱顆粒を伴う細胞死の本態が、Extracellular trap cell death(ETosis)というプログラムされた非アポトーシス細胞死であることを解明し、論文として報告している(Ueki et al, Blood. 2013)。昨年度から推進してきた臨床検討については、ハーバード大学、秋田大学、山形大学、慈恵会医科大学、関西医科大学の医師・研究者と連携をとり、研究を推進している。基礎検討の結果、特に難治性の耳鼻科疾患(好酸球性副鼻腔炎・中耳炎)から得られた分泌物を用いて、ETosisとの関連を明確にしていく方針である。また、本年度はヒト好酸球における細胞表面受容体による生存能への影響、PI3Kの薬理学的阻害薬による基礎検討を進めており、細胞の遊走や接着のシグナルを明らかにし、国際誌へ報告した。
2: おおむね順調に進展している
計画は概ね順調に進展している。昨年度の目標であった臨床検体を用いた検討も行うことができている。本年度は、他の細胞死との比較を行うため、アポトーシスとの差異を電子顕微鏡により形態学的に評価し、学会でその成果を報告した。また、ETosisによって生じるDNA trapsの好酸球性炎症疾患における存在や、その性状について検討を加え、学会で報告するとともに、原著論文として国際誌へ投稿し、追加実験の対応を行っている。一方、特異的シグナル・分子マーカーの探索は引き続いて検討中である。
引き続きヒト末梢血から高純度分離した好酸球による検討を進めることで、病態に直結する知見が得られる。好酸球はプライマリ細胞であることから、マイクロRNAや遺伝子レベルでのノックダウンは行うことがほとんどできない。そのため、基本的にはETosisの薬理学的な阻害とその結果を明らかにし、必要に応じて他の方法で確認し、総合的に進めていくのが最も妥当なアプローチになると考えている。ETosisとアポトーシスという二つの能動的な細胞死に至る経路の差異を明らかにする上でも重要な点である。今後、さらに好酸球がETosisに至る細胞内メカニズムを明らかにしていく。また、生体内では脱顆粒の一形態としてETosisが炎症を増強している可能性について、他の細胞(気道上皮細胞など)との共培養系の確立などの予備実験を行う。結果は随時、国内外の学会(アレルギー学会、臨床検査医学会、国際好酸球研究会など)で報告を行い、今後論文化を目指す。
本年度はほぼ予定通りだったが、消耗品が若干少なかった。
追加実験への試薬等への費用、国際学会での成果発表も予定しており、過不足はない。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件)
バイオメディカル
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