研究課題
基盤研究(C)
本年度も多施設共同研究で日本全国からの褐色細胞腫・パラガングリオーマの遺伝子解析を行った(平成25年度で27例)。内訳は、SDHBやVHLが多い。さらに、ごく最近、次世代シークエンサーを用いたexome sequencingで同定された遺伝子であるMAX変異を日本人患者で同定している。発症機序は、癌抑制遺伝子として働くとされLOHも認められる。MAXはロイシンジッパーをもつ転写因子である。MYC-MAX-MXD1というシグナル伝達を介してmaternal imprinting現象の存在が挙げられる。すなわち,母親から変異遺伝子を受け継いだ場合は発症せず,父方から変異を受け継いだ場合のみ発症する。臨床的な特徴としては、両側副腎性が発症は多く、悪性化が10%と比較的多い等が報告されている。私たちも国内で3例のMAX変異を同定している。我々の症例も全て両側性の褐色細胞腫が初発であり、家族歴は2例で認めmaternalimprintingの遺伝形式であった。悪性例はない。2例は既報の(c.97C>T/p.Arg33X)と(c.223C>T/p.Arg75X)であったが、1例はc.284T>C/p.L95Pで新規の変異である。現在、投稿準備中である。最近小規模な研究ながらSDHB変異陽性における悪性褐色細胞腫の治療における分子標的薬Sunitinibの有効性が報告された。またSunitinib 抵抗性を解除する方法として、我々はAutophagyを阻害する事で同薬のアポトーシス促進・抗増殖作用を増加させることも見出している。 現在、エベロリムスを用いてAutophagyを阻害する事で同薬のアポトーシス促進・抗増殖作用を増加させるか検討中である。
2: おおむね順調に進展している
症例の集まりが年間30例近くと順調である。
NGS(次世代遺伝子解析装置)を用いてSDHA, B, C, D, F2, RET, VHL, MAX, TMEM127の変異パネルの構築が必要かもしれない。既知の遺伝子解析が一度に短時間でかつ安価であるからである。