多発性骨髄腫の塩基除去修復遺伝子多型で健常コントロールと有意差があったPARP-1について検討をすすめた。 1) PARP-1発現量:患者の骨髄腫細胞は、健常者の形質細胞に比較して平均で20倍に高値であった(p<0.05)。2) PARP阻害薬の増殖の検討:olaparib、talazoparib、veliparib、BYK204165の4つのPARP阻害薬を使用してKMM1、KMS11、RPMI8226、MM1S、U266の5つの細胞株の影響を検討した。talazoparibとBYK204165が有効で、特にBYK204165(IC50:1.3 μM to 3.2 μM)が最も増殖を抑えた。一方、olaparib と veliparibは有効でなかった。また、健常リンパ球の影響はほとんどなかった。 3) talazoparibとBYK204165のアポトーシスへの影響の検討:caspase 依存性にも非依存性にもアポトーシスを誘導することがわかった。4) 骨髄腫細胞株でPARP-1、PARP-2発現定量:PARP阻害作用が強いのは、PARP-2発現が高い細胞株で顕著だった。 PARP-1阻害作用が最も強いBYK204165が骨髄腫細胞に強い増殖抑制の影響があったが、増殖抑制に関与するのはPARP-2発現であった。 (意義および重要性)骨髄腫のBER遺伝子の役割を検討した中で、BER遺伝子の1つのPARPの影響が明らかになった。PARP阻害薬の役割は、BRCAなどの二重鎖切断のDNA修復系の異常がある場合のみ、PARP阻害薬が有効であるとの報告が固形がんを中心に多いが、骨髄腫では、PARP1選択的阻害薬が有効であることがわかり、PARP-1の骨髄腫における新たな役割があることも示唆された。
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