研究課題/領域番号 |
25460683
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
高木 明 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30135371)
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研究分担者 |
小嶋 哲人 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40161913)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | プロトロンビン分子異常 / トロンボモジュリン抵抗性 / 血栓傾向 |
研究概要 |
2010年にクローニングした野生型ヒトプロトロンビン全長cDNAを鋳型として変異導入PCR法を用いてp. 596 Argのほか、トロンボモジュリンとの親和性に関連する部位(p.540Thr、p.541Arg、p.592Glu、p.599Lys)変異型ヒトプロトロンビン全長cDNAを作製した。さらに、野生型および変異型プロトロンビンcDNAを哺乳動物細胞用の発現ベクターpcDNA3.1に組み込んだ。 野生型および変異型プロトロンビン発現ベクターをヒト胎児由来培養細胞株HEK293に遺伝子導入後、G418によりネオマイシン耐性および培養上清のウェスタンブロッティング解析により野生型および変異型プロトロンビン高発現HEK293細胞株を樹立した。野生型および変異型プロトロンビン高発現HEK293細胞の培養上清より、濃縮した。 野生型および変異型プロトロンビンを用いて、生理的プロトロンアクチベータ(プロトロンビナーゼ複合体:活性型第X因子・第V因子・リン脂質・カルシウムイオン)、生理的プロトロンアクチベータと作用機序が類似する蛇毒由来プロトロンアクチベータ(Oxyuranus scutellatus)による測定系開発に向けたプロトロンビン活性化法についてpH、イオン強度、リン脂質の必要性および至適濃度、反応時間などのプロトロンビン活性化至適条件をそれぞれの変異体について再確認した。トロンビン測定法としては、生理的なフィブリン凝固時間法および高感度・高精密度が期待できる発色性合成基質を用いた比色分析法について至適条件を検討した。 精製した野生型および変異型プロトロンビンを至適条件下に活性化して生成されたトロンビンにトロンボモジュリンを加えて、経時的にトロンビンの不活化動態をフィブリン形成能を指標に解析する至適反応条件を検討・設定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1つのアミノ酸が置換した変異型プロトロンビン安定発現細胞株を変異により分泌に障害を来すと思われる変異体を除きほぼ計画通り樹立できた。リコンビナント変異型プロトロンビンを20種類程度作製できた。十分に回収できない変異型プロトロンビンは分泌障害を起こしていることが推測され、血栓症の原因にはなりにくいことが推測された。作製した各変異型プロトロンビン由来のトロンビンは予想通り生理的抗トロンビン分子・アンチトロンビンに抵抗性を示すことが確認できた。アンチトロンビン抵抗性の程度は変異の位置だけによって決まるのではなく、変異後のアミノ酸の種類にも依存することが確認できた。血管内皮細胞表面に存在するトロンビン受容体・トロンボモジュリンに結合したトロンビンはフィブリノゲン凝固能は低下するが、発色性合成基質s-2238水解活性は低下しなかったため、フィブリノゲン凝固能によってのみ実施できることが確認できた。今回設定した解析法を用いると、プロトロンビンp.Arg596Leu由来トロンビンはトロンボモジュリン共存下においても正常トロンビンのようにはフィブリノゲン凝固性が低下しないことが検出でき、静脈血栓塞栓症の原因となり得ることが予想された。
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今後の研究の推進方策 |
検討設定した測定法を用いて、作製した変異型プロトロンビン由来トロンビンのトロンボモジュリンとの反応性を解析し、フィブリノゲン凝固能を評価して血栓症発症リスクになり得るかの検討を進める。関連が考えられるほかの変異型プロトロンビンも作製し、血栓症リスクとなり得るトロンボモジュリン抵抗性プロトロンビン変異の情報を集積する。 トロンビン・トロンボモジュリン複合体によるプロテインC活性化能の評価法を検討・設定する。トロンビン・トロンボモジュリン複合体によるプロテインC活性化に残存するトロンビンが活性化プロテインC測定に正誤差を与えることが想定されるのでその回避法を検討する。 アンチトロンビンに抵抗する活性化凝固第X因子解析の準備として、凝固第X因子発現ベクターを樹立する。アンチトロンビン抵抗性を示すことが予想される凝固第X因子p.Arg150Ala発現ベクターを作製し、安定発現細胞株を樹立する。リコンビナント凝固第X因子を用いて、活性化、アンチトロンビンによる不活化、残存活性化凝固第X因子測定法を検討・設定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費で購入した試薬・プラスチック試験管などの一部が販売促進値引きキャンペーン商品になったため当初の計画よりも低価格で購入できた。また、消耗品(試薬・プラスチック製品)は不定期ではあるがキャンペーンなどにより価格の下がるときがあるので、効率的な研究費運用を目指し購入を留め置くこととしたため。 翌年度分として請求した助成金と合わせて必要な試薬を購入し研究を継続する。
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