研究課題
WT1遺伝子は白血病をはじめ様々な固形癌細胞に過剰発現し、がんの発症や進展に深く関与する。本研究はmicroRNAによるWT1発現調節機構の白血病や固形癌において果たす役割を明らかにすることを目的としている。これまでに、WT1遺伝子を標的とするmiR-125a欠損マウスはWT1を高発現し骨髄増殖性疾患(MPD)を発症することを明らかにしてきた。さらにmiR-125a (-/-)マウスはMPDを発症する群と発症しない群に分かれ、発症しない群のマウス骨髄造血幹細胞では代償性にmiR-486が発現誘導され、それがMPD発症を抑制していることを示してきた。このmiR-125aの代償性分子として機能しうるmiR-486 の正常造血細胞の各分化段階および白血病細胞おける発現を解析した結果、miR-486はおもに正常造血では赤血球系前駆細胞において特異的に高発現するmiRNAであること、また慢性骨髄性白血病(CML)および急性骨髄性白血病(AML)患者の骨髄CD34+造血幹前駆細胞分画においても、正常骨髄CD34+造血幹前駆細胞に比較し発現異常を示すことを明らかにした。次にmiR-486の発現を調節する上流因子の同定を試み、2種の転写因子がmiR-486のプロモーター領域を介して調節しうることを明らかにした。これらの転写因子もmiR-486と同様に赤血球系前駆細胞に特異的に高発現しており、またMPDを発症しないmiR-125a(-/-)マウスの骨髄造血幹細胞においても高発現していた。またCML, AML細胞においても発現異常を認めた。これらのことから、赤血球系前駆細胞で特異的に発現する転写因子およびmiR-486がmiR-125a欠損造血幹細胞分画において発現誘導されMPD発症に関与すること、またヒト白血病発症にも関与している可能性が示された。
2: おおむね順調に進展している
WT1を標的とする2種のmiRNAは白血病細胞において発現異常を示し、これら2種のmiRNAの発現を調節する上流因子を明らかにすることがH26年度の目標であり、それを明らかにすることができた。
miR-125a(-/-)マウスはMPDを発症する群と発症しない群に分かれ、発症しない群のマウスの骨髄造血幹細胞では代償性にmiR-486が発現誘導されMPD発症を抑制している。miR-125a欠損マウスの骨髄造血幹細胞においてmiR-486が発現誘導される分子機序をさらに明らかにしていくとともに、それらが白血病幹細胞の発生や維持において果たす役割を引き続き解析していく。
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